第107回 豪ドルはどこまで上がる?!住宅バブルがポイントに 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第107回 豪ドルはどこまで上がる?!住宅バブルがポイントに 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

このところ豪ドルが騰勢を強めています。豪ドルは日本から見ると高金利。日本と米国がゼロ金利政策を継続する中にあって2.75%の政策金利は魅力です。豪ドル/円を1万通貨買えば、マネックスFXの場合1日あたり65円のスワップと呼ばれる金利差収入が得られます。反対に豪ドル/円が下がると思って売っていた場合は、このスワップを支払う側となります。つまり、豪ドルを売るとコストがかかるため、どうしても金利の高い通貨である豪ドルは買いから入って保有し続けたくなるのが投資家心理。リーマンショック前は7.25%もの高金利であった豪ドルは107円まで上昇していたのですが、リーマンショックで55円台まで下落しあっという間に半値になってしまいました。しかし、それでも先進国通貨よりは高金利であったために金融危機が落ち着くと豪ドルへの投資が再び人気化し、昨年末には105.42円まで上昇しました。ほとんどリーマン前の水準に戻ってしまったのです。豪ドル高というだけではなく、アベノミクス相場という円安要因も手伝ってのことでした。

豪ドル/ドル相場も同じくリーマンショック前は1豪ドル0.9849ドルだったのですが、リーマンショックの急落後に同じく人気化し2011年5月には1豪ドル1.1010ドルまで上昇。なんとパリティと呼ばれる1豪ドル=1米ドルの関係である1を超えて、リーマンショック前の水準を大きく上回るところまで上昇してしまったのです。これに困ったのが豪州。あまりに豪ドル高が進むと経済に悪影響となります。豪ドル高を抑制しようと、RBA豪州準備銀行は2011年11月、豪ドルの利下げに踏み切りました。2011年10月に4.75%あった金利は2013年8月までのおよそ2年で2.5%にまで引き下げられたのですが、それでも豪ドルは先進国通貨よりは金利が高いことから、一向に豪ドル高は収まらず、とうとう2013年RBAのスティーブンス総裁は「豪ドル高は不快なほど高い」などと繰り返し発言し、豪ドル安誘導の「口先介入」に踏み切りました。これに驚いた市場は豪ドルの利食いに走り、2013年豪ドルは大きく下落したのです。

市場には「中央銀行には逆らうな」という言葉があります。「国策に逆らうな」または「国策に売りなし」とも言いますが、政策に反したポジションで臨んでも勝ち目はないということ。昨年RBAは豪ドル高けん制発言を繰り返し、市場は素直にこれに従いました。逆らっても勝ち目はないからです。それなのに、最近豪ドルが再び上昇トレンドを描き始めました。一体どういうわけなのでしょう。

昨年12月のRBA理事会後の声明までは「豪ドルは不快なほど高い」と"口先介入"し、豪ドル高の進行を抑えてきたのですが、実はここ2回の会合では「歴史的な水準と比べて高い」という客観的な表現に変わっているのです。この頃から、豪ドル安には歯止めがかかり、さらに、RBAが3月26日に発表した金融安定化報告では「金融緩和に起因する住宅価格の上昇や家計の借り入れの増大が、住宅市場の投機的な動きを助長する」とした豪ドル安による弊害が起こっていることへの警告が見られたことから、豪ドル高が加速し始めました。「オーストラリア中銀は住宅バブルへの警戒感を強めている」と受け止められたのです。隣国ニュージーランドは住宅バブルを引き締めるために利上げに踏み切ったばかり。つまり、昨年までの利下げのサイクルは終了したのではないか?さらに、住宅価格動向如何ではニュージーランドのように利上げせざるを得ないという状況にもなるのではないか?そんな思惑が市場に芽生え始めたのです。

先週は2月の豪住宅ローン貸出件数が前月比2.3%上昇と市場予想の2.0%上昇を上回るというニュースが豪ドル高を招きました。これまでは住宅ローン貸出件数のような細かなデータが為替市場で材料視されることはあまりなかったのですが、気の早い市場関係者の間ではオーストラリアの利上げシグナルを素早くキャッチしようと動き始めたのです。この先しばらくの間は豪州の住宅関連の指標が注目されることになりそうです。

こうした反面、日本の個人投資家らは豪ドルを売っているとかなんとか...。先週目にしたFX関連のニュースでは10カ月ぶりの高値水準にまで上昇してきた豪ドルが上がりすぎだとみた個人が豪ドルをショートしているようなのです。売り玉が溜まると踏み上げ相場に繋がりやすくなります。踏み上げとは売り玉が投げさせられるという意味で、豪州の経済指標が良好で投機筋が豪ドル買いに走った時に、売りポジションの損切りが出易く、さらなる豪ドル高を招くことで、現在はこうした豪ドル高が起こりやすい地合いが醸成されているとみることもできます。1~2月の新興国通貨安の時には一緒に売り込まれた豪ドルですが、新興国通貨も大きく戻りを入れる中で豪ドル高にも勢いがついています。安易に売りから入るべからず。豪ドルは100円方向を目指して押し目を丁寧に拾う戦略が吉。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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