第26回 M&Aを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第26回 M&Aを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。早いもので、いよいよ来週からはゴールデンウィークとなりました。既にいろいろな予定を立てられている方も多いのではないでしょうか。名だたる観光地は渋滞や混雑が避けられないのでしょうが、イライラは事故やトラブルの元です。以前、知人にはイライラ解消には是非ともそれら混雑や不便も含めて楽しんでしまうことが重要だと言われたことがあります。未熟者である筆者はそれでもなかなか楽しむことはできないのですが・・・(笑)。みなさま、楽しい休日をお過ごしください。

ここ最近の株式相場は、前回のコラムでも指摘した通り、追加金融緩和の催促相場といった様相が色濃くなってきました。4月上旬、黒田日銀総裁の追加緩和に対する発言で株価が大きく動いたことは、まさにその証左と言ってよいでしょう。懸念されるのは、これまで市場に先んじてインパクトを与えてきた「異次元緩和」が、ここにきて市場の期待の方がむしろ先行し、当局がそれに追随する(もしくは火消しする)流れとなりつつある点です。「市場との対話」は中央銀行総裁の世界的重要要件となっていますが、やはり金融政策では市場の一歩先のアクションがもたらすインパクトは非常に大きなものがあります。消費税増税の影響も含め、当面は金融政策が、そしてどこまで市場が催促するか、への注目度は否が応でも高まってくると考えます。

さて、今回取り上げるテーマは、「M&A」です。かつて3つの過剰(過剰設備、過剰負債、過剰雇用)とまで言われた日本企業ですが、長年のリストラを経てこれらはすっかり解消することとなりました。現在はむしろ様々な経営資源が不足気味ともなっており、その足りない部分は時間をかけて自社で育成するというよりも、M&Aによって一気にその穴を埋めようという動きが活発になってきています。M&Aの持つイメージも、以前はややネガティブな感もありましたが、現在はむしろドライに割り切った反応が一般的になってきているようです。どんどん企業間競争が激化する中において、こういった時間を買うM&Aは今後もさらに増加してくるものと予想しています。

当然ながら、大型のM&Aが発表されると当該企業の株価は大きく反応します。ただし、このコラムではもう少し捻って、M&A発表後には「次の再編候補を探し出してそれらの企業まで大きく株価が反応する」ということに注目してみましょう。そもそもこの付随的な株価反応は、M&Aによって業界勢力図が一夜にして変化する(と予想される)ことを見越したものに他なりません。再編が起こり、これまでの競合の仕方が通用しなくなれば、その周辺企業も影響を受けることは明らかだからです。したがって大型M&Aがあった場合には、その周辺企業にも大きな投資チャンスがある、と言うことができるのです。とはいえ、大型M&Aがいつ起きるかというのは外部から予想が不可能です(具体的な予想があれば、むしろインサイダー情報を疑うべきでしょう)。ですので、M&Aをベースとした株価ラリーというのはM&Aが発表された時点から「ヨーイドン」で始まるという性格を持ちます。これに参戦することは長期的視点を軸とした投資スタンスとは明らかに異なる投資スタイルとなりますが、割り切って臨むことができれば、これも一つの有効な手法と位置づけることができるでしょう。

ただし、どの周辺企業が大きく影響を受けるのか、次なる再編候補になるのか、を「ヨーイドン」のタイミングで即座に判断するのはそう簡単ではありません。やはり普段から業界構造などを理解しておくことは最低限必要なことと考えます。そしてそういった業界分析をすれば、いつ、誰と、ということは全くわかりませんが、M&Aが将来起こり得るだろうということは実はかなり予測ができるものでもあるのです。企業の経営陣はどういった再編の絵を描いているのか。そういったことを考えるのも、株式投資の一つの醍醐味と言えるかもしれません。なお蛇足ですが、その大型M&Aが本当に上手くいくのかどうか、もまた株式市場の大いなる注目点となります。こちらは「ヨーイドン」ではなく、株価の短期的なラリーが終わってからのむしろ長期的なスタンスで臨むスタイルになるでしょう。これに関してはまた別の機会にご紹介することにいたしましょう。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

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