第108回 今年も5月がやってくる!SellinMayリスクを考える 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第108回 今年も5月がやってくる!SellinMayリスクを考える 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

今週末から日本の大型連休GWに突入します。GW前後は株価の調整が入りやすく、連れてドル/円相場も円高になりやすいとして警戒が強まりますが、そもそもこの時期に相場が不安定になるのは「Sell in May」というアメリカのウォール街に伝わる相場格言によるところが大きいでしょう。

Sell in Mayは5月に株を売り、9月の半ばまで相場から離れていろというウォール街の格言ですが、2010年以降ここ4年間は格言通りに5月に米株が下落しており、馬鹿にしたものでもありません。特に昨年はアベノミクス相場、4月4日に日銀による異次元緩和政策で日本株上昇に弾みがついていたために、格言などお構いなしに株式相場は大きく上昇していたのですが、5月22日、元FRB議長バーナンキ氏が議会証言で年内にも量的緩和縮小を開始する可能性があることを示唆してから大暴落となり、結果的に5月の株安が実現したことが記憶に新しいですね。株安に連れてドル/円相場は5月の高値103.73円から6月14日には93円台にまで下落、10円もの円高進行となりました。
今年はこのようなリスクがあるでしょうか。

そもそも何故「Sell in May」なのか、そこから考えてみましょう。

アメリカの多くのヘッジファンドは解約できる時期が決まっているとされています。その多くは4半期毎で3月、6月、9月12月の月末にしか解約できないルールとなっていて、解約をするためには45日前に解約の旨を通知しなければならないという規定があります。となると2月、5月、8月、11月のそれぞれ15日ごろまでに解約が集中しやすいということになりますね。解約の通知があればファンドはそれに応じてキャッシュを投資家に返さなくてはならないため、市場でポジション解消に動きます。おおよそ、10日前くらいから相場は動き始める事が多いと言われています。となると、ヘッジファンドに資金を預けている投資家が今後の相場をどのようにみているかが肝要で、相場が安定して上昇となっていれば、解約申し込みは多くはないと考えられますが、不安定な地合いとなっていれば一度キャッシュ化しておこうという投資家による解約が、相場をさらに崩してしまうものと考えられます。

加えてアメリカのヘッジファンドは6月中間決算・12月本決算のファンドが多いため、決算の数字を良く見せようと、5月中に利食いを入れるとも指摘されています。このケースだと相場観とは関係なしに利食えるものは利食ってきますから、これまで高かったものが下落するリスクが高まる時期に入るとも言えます。逆にこれまで売り込んでいたモノがあれば買い戻すということで、ショートカバーも起こりやすいとも言えますね。
そもそもの格言リスクで考えるならば、この5月のヘッジファンドへの解約申し込みがどの程度出てくるかが焦点となるのですが、ここで気がかりなのが、昨年2013年は海外投資家勢が日本株を15兆円もの規模で買ったこと。2013年は大納会の16291.31円が高値となり実に56.7%もの株価上昇でしたが、海外勢は2014年に入ってから日本株を売ってきており、その規模が2兆円余りになるとか。まだまだ本格的に売っているわけではありませんが、もし、日本株上昇の期待が薄いとみるならばさらにポジションを解消する動きが出てくるかもしれません。先行き上昇期待がないならば、手仕舞ってしまおうと考えるのは自然なこと。日本株の買いポジションがまだまだ大きいことから、ポジション解消のリスクが高い市場の一つと言えるでしょう。

その点から考えると、5月15日までに日本株がさらに上昇軌道に乗るだろうという強い期待と確信が必要となってきます。その意味で最も注目されるのが4月30日の日銀の金融政策決定会合。この4月は日銀の政策会合が2回あるんです。前回の19日の会合では、一部に追加の緩和策期待があったことから、黒田日銀総裁の追加緩和を考えていないとした発言が失望されたという見方もありますが、逆説的に考えるならば、これで市場の日銀への過剰な期待を払しょくしたために、30日に市場に追加緩和に含みを持たせるメッセージを発信されれば、ポジティブサプライズとなっての相場の上昇につながる可能性もあるわけです。

しかしながら4月の月例報告では国内景気の基調判断を下方修正する方針と言う報道があり、景気の基調判断の下方修正となれば今年7-9月期のGDPを見て判断するとされる10%への消費増税引き上げのスケジュールに間に合わせるためにも、日銀も4月30日の金融政策決定会合でテコ入れに動くんじゃないか、という期待が改めて出てきました。黒田さんが市場の期待を払しょくしたばかりですが、市場の追加緩和期待は際限ないですね。それほどに、このところの日本株の動向がもどかしいということでしょう。政府側も株価動向には神経を使っていると見え、先週は麻生財務大臣が「GPIFは6月以降に動き出す」と発言し、この日、日経平均株価は大幅高となりました。

株価動向を睨み政府がどのようなメッセージを市場に発信してくるか、そして30日の日銀の金融政策決定会合への市場の期待の高まりと、その結果の温度差で、日本株市場が大きく動くものと予想されますが、もし、あらゆる試みにも株価が持たずに失速することとなれば5月の解約申し込みが増える可能性が高いと思われます。その場合、ドル円相場もつれ安となりますので注意が必要ですね。

しかしGWに入っての連休の谷間です。おそらく日銀は動かないと(動かれると金融関係者は休みどころではないですね)見られていますが、それでも、市場が必要以上に期待を高めてしまうことがあると、マーケットが薄い分乱高下しやすいと思われますのでご注意を。

来週29日(火)と再来週5月6日(火)は祝日のため、コラムはお休みです。皆様、よいGWを!


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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