第64回 中国の赤ちゃんに適した粉ミルクの開発【北京駐在員事務所から】

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第64回 中国の赤ちゃんに適した粉ミルクの開発【北京駐在員事務所から】

北京市政府の科学技術委員会が、このほど1,000万元(約1億6,000万円)の予算を投入し、「中国人の母乳の成分分析と母乳に近い粉ミルクの開発」を行うことになりました。
プロジェクトでは、母乳に含まれる成分、特に赤ちゃんの発育と健康維持に有効な成分の特定を行い、データベースを作成した上でこれを粉ミルクの開発につなげるとしています。

現在、中国で採用されている粉ミルクの成分に関する基準は、世界保健機関(WHO)が公表した情報に基づき定められており、主要先進国と概ね同等のものになっています。
しかしながら、「現在の基準は中国の赤ちゃんには適切でない」とする研究もあるそうで、今回独自の分析が行われることとなりました。

今回の研究には、中国産の粉ミルクの品質を高め、国内メーカーの地位を向上させる目的があると言われています。
日本でも大きく報道されましたが、中国では2008年に粉ミルクへのメラミン混入により、乳幼児の死亡事例が発生し大きな社会問題となりました。この事件の後、国内メーカーの信用は失墜し、日本を初めとする海外ブランドの製品に人気が集中しました。
2011年3月に発生した東日本大震災以降は、放射能汚染への懸念から日本メーカーの製品の人気が低下し、現在はニュージーランド、あるいはドイツなど欧州のブランドが人気となっています。
香港などで、中国大陸からの訪問客が粉ミルクを大量に購入し、地元の市民が購入できないとの問題も発生しました。また、北京の空港に到着し、預け荷物のピックアップのためにターンテーブルを見ていますと、スーツケースや炊飯器に交じり、粉ミルクの箱を頻繁に目にします。

今回の研究は、複数の研究機関に加え、地元の乳製品メーカー三元食品が担当します。
同社の責任者は、「どんなに頑張っても、母乳に匹敵する製品は作れないが、最善を尽くす」と述べています。国産粉ミルクの信頼回復につながる成果を挙げることができるでしょうか?
私も、三元食品の牛乳を愛飲しておりますので、ちょっと応援したい気持ちでおります。

中国では、夫婦共稼ぎが一般的で、産前産後の休暇や、産休明け後の短時間勤務等の制度はあるものの、母親は出産後数ヶ月から半年程度で仕事に復帰することが普通で、育児は親(赤ちゃんにとっては祖父母)やお手伝いさんに頼ることが多くなります。
このため粉ミルクの市場も大きく、上述のメラミン混入事件は大きな不安をもたらしました。
国産品の品質が向上し、親たちが高価な海外メーカー品の調達に奔走せずともすむようになることを願いたく思います。

粉ミルクは赤ちゃんにとっての命綱ですので、是非安心な製品が広く普及して欲しいと思いますが、断乳後も都市部の大気汚染、飲料水の品質や農産物への残留農薬等、中国では食に関する問題が日常的に発生しており、子育てに関しては心配の種が尽きません。
企業の利益優先の姿勢と、政府等関係機関の責任の所在が不明確であることが元凶と考えられますが、大変根の深い問題です。
関係者が協力し、知恵を出し合って問題の解消に努めて欲しいと切に願う次第です。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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