第109回 コナンドラム?!米国低金利の背景に中国の存在 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第109回 コナンドラム?!米国低金利の背景に中国の存在 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

SellinMayの警戒が相場のエネルギーを奪ってしまっているのでしょうか?ドル/円相場は、このところはずっと100~103円台でのレンジで安定、すっかり膠着してしまっています。為替の変動要因は多岐に渡りますが、今、為替市場関係者の間では「上がらない米国長期金利」と「中国の外貨準備による影響」が話題となっています。何故、量的緩和縮小に踏み切り、次なる焦点が利上げ時期へとシフトしている米国の金利が低く抑えられてしまっているのか?この裏に膨大な中国の外貨準備が影響しているという指摘が出てきています。

「コナンドラム(謎)」という言葉をご存知でしょうか。2000年代半ば、FRBによる相次ぐ利上げにも関わらず米長期金利が上昇しなかったことを当時のFRBグリーンスパン議長が評した言葉です。このところ発表される米国の経済指標は軒並み改善を示しており、米国の景気回復期待は高まっています。また、リーマンショック以降、米国は金利をゼロにした上、量的緩和政策をとってきましたが、今年そのドルのバラマキ政策とも揶揄された量的緩和政策も縮小に踏み切りました。市場に放出されるドルの量が今後少なくなっていくことや、景気回復期待が高まれば「金利」は上昇します。お金は金利の高いほうへとシフトする側面がありますので、今年2014年は「ドル高」になるという予想が大勢でした。ところが、ドルは今年に入って高くなるどころか安くなっています。ドル/円相場も1月2日の105.40円台が最も高くじりじりと円高方向、ユーロ/ドル相場も先週5月8日のECB理事会でドラギ総裁が、6月の理事会で緩和策に踏み切る可能性を強く示唆したために、足元では大きくユーロ下落となりましたが、ECB要人がこうしたユーロ高牽制発言を繰り返さなくてはならないほど、ユーロが強含む展開が続いていました。これは、米国長期金利が一向に上がらず落ち着いているためとも考えられます。

何故、米国金利は低下したままなのでしょうか?

FRBイエレン議長がとても慎重で「低金利政策は長期に継続する」スタンスを明確にしているため金利が上がらないのだ、とか、ウクライナ情勢の緊迫で安全な資産である米国債に逃げているなどの解説が見られる他、積み立て不足を埋めさせることを意図した新規則を受け、年金基金が米長期国債の購入を3倍に増やす可能性があるため、年金基金が米国長期債を購入しているせいだとの指摘も。

そして、もっともインパクトが大きいのが中国の外貨準備による米国債の購入の可能性です。中国人民銀行は4月15日、「3月末の中国の外貨準備備高は3兆9500億ドルに達し、2013年末より1300億ドル増えた」と発表しました。2013年末の時点でも中国の外貨準備高は2012年末より5097億ドル増の3兆8200億ドルに達しましたが、年間の増加幅は史上最高を記録しています。そう、ここで思い返されるのが、中国による人民元売りドル買い介入です。2月、中国人民銀行は大規模な人民元売り・米ドル買いを実施しました。中国の景気減速が懸念されていますが、この介入には輸出企業への配慮とともに、元高を見込んだ投機資金の流入によるバブルをけん制する狙いがあるとみられます。バブル抑制のための、いえ、バブル崩壊につながらないための元安誘導ということですが、この介入によって中国人民銀行の外貨準備におけるドル資産が膨れ上がったものと考えられます。

そして、増加した1300億ドルものドルを、米国債やユーロ、円に換えるオペレーションを行っている、というのがこのところの為替関係者の専らの噂なのです。介入によってドルを買う行為自体はドル高要因ですが、その後、外貨準備におけるドルの割合が増加してしまったために、中国がポートフォリオのリバランスを行い、ドルをユーロに換えたり、円に換えたりしているため、ユーロ高や円高を招いている可能性が濃厚だというのです。そして、それは米国債投資にも・・・。これは米国債金利の低下を招きますから、日米金利差縮小圧力となり、ドル/円相場は一層上がりにくくなってしまっているということですね。

この指摘が事実だとして、中国がそのオペレーションを宣言して行うことはありません。いつ、どのような形で、どのくらいの規模のユーロ買い、円買い、米国債買いを行っているかは正確には把握できないのですが、これが現在の「コナンドラム(謎)」の正体であるという指摘には一理あると受け止めています。為替相場は各国の金融政策の違いによるパワーバランスが長期的視点では大きな材料であることもの真理なのですが、そう簡単に動くものではないのが相場の面白いところでもあり難しいところ。今後のポイントはこうした中国のオペレーションがいつまで続くのか、為替操作国として各国から非難されることはないのかといった部分ですが、米国サイドとしても金利が低く抑えられているうちは株価も安泰であるため、それ程困ったことではないのかもしれません。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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