マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
5月下旬から日本株市場がやおら活気づき、日経平均は15,000円台の大台を固め、ドル/円相場も6月初週はECB理事会や米雇用統計といった為替の変動要因となるビッグイベントをこなして102円台で値固めに入ったようです。
年金基金の動向などを反映する信託銀行 は5週連続で日本株を買い越しています。信託銀行の売買動向は東証が毎週発表していますが、この先は特にこのデーターには注目。というのも、今、市場が注目している「年金基金」は信託銀行口座で売買を行っているからです。企業年金などは2~4月に代議員総会を開き運用方針を決定、実際に買い始めるのが大型連休後とされていることから、5月から信託銀行の日本株買い急増は、時間的なタイミングからみても企業年金の買いも大きく入っているだろうと指摘されているのです。年金基金の日本株買いが急増したことがこの5月の日本株を支えた可能性が大きく、特に5月第5週(26-30日)の買越額は2499億円に達しており、2009年3月4週(2508億円)以来、5年2カ月ぶりの高水準だったことを見れば6月の上昇は本邦勢主導だったとみてもいいでしょう。半面、日本株の売買代金シェアで6割強を占める海外投資家 は同時期119億円の売り越しでした。
5月の年金の買いが公的部門だったのか企業年金だったのかは定かではないのですが、やはり今後注目されるのがGPIFなどの公的年金基金。129兆円規模の年金のポートフォリオバランスが変更されれば、大きなインパクトとなります。先週改めて国内株への投資を20%にまで引き上げることが話題となりましたが、2015年からGPIFだけでなく霞が関官僚の年金である国家公務員共済や地方公務員共済、私立学校教職員共済組合などの制度3共済の年金基金も全て同じポートフォリオに統一されることが決まっており、仮に国内株への投資が20%にまで引き上げられれば7.6兆円規模の日本株買いにつながるとして注目されています。
更に、5月中旬以降、欧米のヘッジファンド勢が続々と来日し当局関係者を訪問している、という噂が金融市場を駆け巡っていましたが、どうやら彼らの目的は年金の「オルタナティブ投資」資金。オルタナティブとは代替投資と訳されていますが、簡単に説明すると高速や鉄道、石油などのインフラ投資であったり、REITなどの不動産、あるいは金などもこのカテゴリーに入りますが、ヘッジファンドなども含まれるということで、この資金を取りに来ているものと推測できます。GPIFのポートフォリオでは現在オルタナティブ分野はゼロ。伊藤教授案では現在5%にまで引き上げることが提案されており、GPIFと制度3共済の年金マネーのオルタナティブ投資総額は8.6兆円にも上ると推計されているのです。仮にヘッジファンドにこの分野の資金が動いた場合、どこにどのような投資をするかは全く解りませんが、少なくとも積極的にリスクを取る運用をするでしょうから、債券運用は考えにくく、妙味のある株式市場へと資金が動くことでしょう。
こうした背景と今後の思惑で動き出した日本株。本邦年金マネーに加えて欧米ファンド勢が加わればさらなる上昇となることが見込まれています。外国人投資家が日本株を買う場合、ドルやユーロを円に替えて日本株を買うわけですから、株と同時に円買いもしていることになります。株高となる場合に円高となる相関があれば問題ないのですが、デフレ脱却を目指す日本の政策をとってみても、現状では日本株高と円安が同時に起こります。これではせっかくの株高による利益が円安により相殺されてしましまうため、外国人投資家は日本株買いと同量の円売りをしてヘッジしていることが多いのです。そうすれば株の上場率そのままをドルベースの資産価値の上昇として享受できる、ということで、日本株が動けば為替も動くのです。6月相場、目先はサマーラリーよろしく大きな上昇相場が期待できそう。ドル/円相場は年初につけた105円台を目指す強さを見せるかと思われますが、その近くまで到達する頃は、また違うシナリオも生まれることでしょう。短期は強気、中長期的には米株の変調には十分留意しておきたい相場です。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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