第115回 日本株とドル/円相場のデカップリングの何故 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第115回 日本株とドル/円相場のデカップリングの何故 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

このところの外為市場で注目されているのが「日経平均とドル/円相場のデカップリング」。相関がみられるカップリングに対して、デカップリングとは相関性がなくなること。2014年年初から4月上旬あたりまでは、日経平均とドル/円相場は比較的同じように動いていましたが、5月以降は株だけが上昇して、為替相場は膠着したままです。株の上昇は6月10日の「年金マネーが動き出した~海外勢参入思惑でドル高到来?!」コラムで取り上げた年金マネーによる日本株買いによるものと推察できるのですが、何故株だけが上昇して、ドル/円相場は動かないのでしょうか?!


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「米10年債利回り」をドル/円相場のチャートと重ね合わせてみるとこの謎はすぐに解けます。上がらない10年金利と相関しているのですね。6月のFOMCでも低金利政策が長期化されるだろうことが改めて確認され、ドルの強気派が鳴りを潜めています。また、5月12日の「コナンドラム?!米低金利の背景に中国の存在」コラムで、中国などのアジア中央銀行の外貨準備がもたらす影響の大きさを取り上げましたが、この中で「中国がドル買い元売り介入によって増大した外貨準備で米国債を購入していることで米金利が低下している」可能性についても取り上げました。米金利低下はドルの買い意欲の低下に繋がりドルの上値を抑えてしまいます。


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そして、新たに出てきた新興国の外貨準備が円買いに動いていると推測できるニュース。日銀が先週18日に発表した2014年1~3月期の資金循環統計(速報)、3月末の時点で海外投資家が抱え込むTBの割合は発行額全体の31.5%と、四半期ごとの統計が始まった1997年10~12月期以来の最高を再び更新していることが分かりました。

TBとは償還までの間が短い国庫短期証券。ヘッジファンドなどの投機筋が円を買い持ちにする際にもこの海外投資家のTB保有残高が増えるものの、今年3月末時点でファンド勢は円売りに傾いていました。では一体どの海外筋がTB保有を増やしているのか。

IMF・国際通貨基金が4半期ごとに明らかにしている「各国の外貨準備構成統計」では、ドル換算した円の割合は、13年の後半からは円安地合いにもかかわらず持ち直しています。つまり、外貨準備による円建てTBなどへの「乗り換え」がコンスタントに進んだと推察できるということです。ただし、この統計には中国の通貨別内訳のデータが提供されていません。ということで中国の外貨準備がTBに入っているとの確信はないのですが、外為関係者の間では「中国のドル売り・円買い、TB買いも出ている」との見方が専らです。TBの買い、つまりこれが円高圧力となっているということですね。今、外為市場で警戒されているのは米国の利上げが遠のくことで、新興国によるドル買い介入が息を吹き返し(自国通貨安誘導のため)それに伴って増大したドルの分散目的からの円買いが増えるとのシナリオです。米国の金利が上昇してこないとなると、こうしたオペレーションによる円高圧力がドル/円の上値を押さえ続けるのかもしれません。


外為市場ではこれらの背景からドルの上値が抑えられているのですが、日本株市場はPLO相場と呼ばれています。プライス・リフティング・オペレーションなのだそう。リフティング・・・持ち上げるですね?!消費増税10%を実現すべく7-9月期のGDPを下げさせるわけにいかないという国策相場。円安とならなくても株高となるこのところのデカップリング状態に違和感を覚える向きもあるようですが、日本は3.11以降、LNGを輸入しなければならず、巨額の赤字を計上する赤字国となってしまいました。過度の円安はあまりいいことではありません。株と為替のデカップリング相場は決して悪いことではないと思っています。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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