第72回 急速に拡大するコーヒー市場【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第72回 急速に拡大するコーヒー市場【北京駐在員事務所から】

中国を代表する飲み物と言えば、何と言っても「お茶」になります。
日本で広く飲まれている烏龍茶やジャスミン茶以外にも、日本の緑茶に近いものから紅茶に近い発酵茶まで様々な種類があり、中には100グラムで数万円の値がつく高価なものもあります。

日本と同様、ペットボトルのお茶飲料も販売されていますが、市民の多くは外出前に自宅で茶を入れ、ボトル(水筒)に入れて携行しています。
また、北京には店内で様々なお茶を提供する「茶館」があり、老舗の有名店は観光名所にもなっています。

「お茶大国」の中国でも、近年若年層を中心にコーヒーを愛飲する人々が急増しています。
そして、この中国コーヒー市場の拡大を牽引しているのが、日本でもおなじみのチェーン店「スターバックス」です。
スターバックスは、日本から遅れること3年の1999年に中国に進出し、近年急速に事業を拡大しています。
現在は日本を上回る約1,200店を展開しており、来年中には店舗網を1,500店まで拡大する計画です。
北京の中心部では、主要なオフィスビルやショッピングモールのほとんどに出店しており、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンなどと同様、おなじみの顔になっています。

商品の価格は、300円から500円程度で、ものによってはそれ以上になりますので、日本と大差ない水準です。中国の所得あるいは物価に照らすとかなり高価ですが、これが「ステータス」になっており、ホワイトカラー層を中心にファンを増やしています。ビジネス街で会員カードを手に飲料を購入するスタイルが、一種の「成功の象徴」にもなっているそうです。

同社の経営方針として、福利厚生の充実など従業員を重視する姿勢、立地に応じた店舗外観及び内装の工夫、さらに市場のニーズにあわせた商品の開発と投入があります。
北京にも、日本と同じような店から中国テイストの店まで様々あり、また中国の伝統菓子である「月餅」などの期間限定商品も数多く販売されています。
北京で見る限りはやや飽和感がありますが、今後日本と同様、地方都市などへの出店が続けば、さらなる成長が見込まれます。

もちろん、市場拡大の恩恵をスターバックスに独占させる訳には行かぬということで、北京では香港系や韓国系のチェーン店を含め、コーヒーショップ間の競争が熾烈を極めています。
日本ではコンビニのコーヒーが人気で、コーヒーショップから需要を奪っているとも言われますが、こちらではまだコーヒーは贅沢な飲み物との位置づけで、価格は高めでもゆったりと落ち着ける店舗が人気のようです。
スターバックスも、他社の攻勢を受けて立つばかりではなく、将来的には傘下のティーハウスチェーン"Teavana"を中国でも展開し、コーヒーとお茶の両方で中国の喫茶、カフェ需要を押さえるとの構想を持っています。
同社やライバル各社の動向が注目されます。

中国でのコーヒーの普及ぶりを見ますと、1970年代から80年代にかけ、日本にハンバーガーを広めたマクドナルドに重なります。
人口が多く、所得が増加している中国は、小売、外食などの業界にとっては魅力的な市場です。
長い伝統を持つ中国茶と、新参のコーヒーがどのように市場を分け合い、またこれからの中国の飲料、カフェ文化がどのように発展していくのか、大変興味深いところです。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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