マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。日本株はようやく上昇基調となってきました。しかし、羨ましいことにNYは史上最高値を更新している一方、日本株はまだ年初の高値にさえほど遠い状態です。確かに年初から懸念されていた消費税増税の影響は実は軽微との見方が広まってはいますが、日銀短観や直近の小売売上動向などを見る限りは、あまり楽観的には見られないのではないか、という印象は拭えません。材料面でも、成長戦略第3の矢も閣議決定され、これからしばらくは大きなイベントがない状態です。株式市場は、まだ当面は景気の行方に神経質な展開ということになるのかも知れません。忘れてはいけないのは、10月に消費税再引き上げの最終判断が出るということ。中途半端な景気状況ではどちらに転ぶか見通しが立たないため、株式市場も一進一退となる可能性があることを意識しておくべきでしょう。
そういった中、今回取り上げるテーマは「配当」です。相場が方向感を失った時でも、配当に魅力のある株式は手堅いパフォーマンスが予想されるため、です。ただし、このコラムですので、もう少し捻って考えてみたいと思います。実は本年5月、磐石な財務基盤を持つ企業として有名なアマダが、期間損益のすべてを株主還元(配当や自社株買い)に回すと発表しました。ご記憶の方も多いかと思います。同社は世界シェアトップクラスにある板金加工機械を軸に利益がどんどん純資産として積み上がる状況になっていました。そのため、高収益企業ではあるものの、結果としてROEは1桁台前半という「低い」水準を余儀なくされていたのです。それが今回、株主還元政策を大きく転換させ、資産の効率性を引き上げていこうという方針を明確に打ち出しました。そのインパクトは強烈で、株価は一週間で30%を越える急騰を演じています。この方針転換には、ROE(資本の効率性)を重視する市場の見方に大きく影響されたものと推察しています。実際、この少し前、2014年から算出されることとなった「JPX日経400」というインデックスは対象企業の選定手段としてROEを基準に取り入れており、多くの企業がROEをこれまで以上に意識せざるを得ない状況となってきていました。ROEという概念が株式市場で話題となってからおよそ20年ですが、ようやくそれが現実的な指標として機能し始めたということなのかもしれません。
アマダの例は極端かもしれませんが、こういった例は今後もっと増えてくると考えます。純資産は大きければ大きいほどよい、無借金は無条件によい、といった見方はどんどん過去のものとなってきています。株主数や流動性の確保を考えると、自社株買いには限界があります。資産の効率性を考えるうえで、配当という形の社外流出は今後、非常に重要な経営手腕が求められるということになってくるでしょう。
既に多くの企業は配当方針を決算短信などで開示しています。かつてはどの会社も「安定配当」一辺倒でしたが、近年は配当性向を明記するなど、定量的な説明をする会社が増えてきました。配当利回りなどは大凡のところが予想できるようになってきたという点で、投資家には明に追い風が吹いています。そして現在はまだまだ少数ですが、四半期配当を実施する企業や配当方針にDOE(純資産配当比率)を掲げる企業も出てきました。これらは期間利益に直接連動しない配当方針とも言え、資本の効率性にかなり戦略的に注力しているフシがうかがえます。その分、経営陣の舵取りは大変となりますが、株主にとってみれば実に手堅い配当銘柄になります。配当絡みとなると、配当利回りで銘柄検索する例が多いのですが、こういった視点から「配当銘柄」を考えてみるのも一つの選択手法になると思います。配当の世界でも、静かに、しかし着実に進化が始まっているのです。
コラム執筆:長谷部 翔太郎
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