マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
先週3日発表の、6月米雇用統計で非農業部門雇用者数が28万8千人増、失業率も6.1%へと低下しました。これだけいい数字が出てきても尚、ドル/円相場は102円台までの上昇に留まり、レンジを抜けずにいます。雇用統計の数字がいいものの、その日が高値となって週明けから下落に転じるという流れが続く今年前半の相場、この1-6月の半年でドル/円相場は3.7%の下落となっています。日経平均が大納会の高値から比較すると1-6月はおよそ7%もの下落で終えたことと比較すれば踏ん張った印象ですが、しかしこの低ボラティリティ(変動幅が少ない相場)では、トレーダーらが利益を上げるのが困難で、あちこちから嘆息の声が上がっています。連日の史上最高値更新が話題だったNYダウでさえ、1-6月の上昇率はわずか2.28%でした。
この相場がいつまで続くか、ボラティリティが上昇し、トレンドが生まれるのがいつかを予想するのは非常に困難です。ある向きはSell in Mayを、ある向きはSell in Juneを唱えましたが、危機は回避され安定した相場が続いています。今回はファンダメンタル分析ではなく、あえてテクニカル分析のフォーメーション(パターン分析)から、ドル/円、クロス円の今後を占ってみます。
マネックス証券のFX PLUSのチャートを使って、ドル/円、ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円、NZ/円の週足に、トレンドラインとレジスタンス(サポート)ラインを引いてみました。
すると、どのチャートも綺麗なトライアングル(三角持合い)が見て取れます。しかしこのトライアングル、綺麗な正三角形ではありません。トライアングルには、シンメトリカル(対称)、アセンディング(上昇)、ディセンディング(下落)の3種類が存在します。
(1)シンメトリカル・トライアングルは、下向きのレジスタンスラインと上向きのサポートラインの2本から形成される三角形。切り下がり具合と切り上がり具合がほぼ同じです。2013年5月の急落から11月にレンジをブレイクするまでのドル/円の週足が綺麗にこの形でした。シンメトリカルの場合、売り方と買い方の力関係がほぼ互角であるため、どちらに抜けるか予想するのは極めて困難なのですが、揉み合いに入る前のトレンドが再開するケースが多いのが特徴。5月までが上昇トレンドだったため、このトライアングルは上に抜けると考えます。実際11月下旬からドル/円相場は再度上昇を開始しました。
(2)アセンディング・トライアングルは、上辺のレジスタンスラインが水平で、下辺のサポートラインが上昇している形。買い方の方が売り方よりも積極的で安値を切り上げているのに対し売り方は防戦あるのみ。強気が優勢のパターンと解釈されます。アセンディング・トライアングルは、レジスタンスラインを終値ベースで上に抜けることでパターンが完成します。
現状ではポンド/円が綺麗にこの形を完成させて上昇となりました。上値目標は形成された三角形の上下の幅がそのままレジスタンスラインから上に乗っかると考えます。163.66円-173.93円という10円幅の三角形でしたので、173.93円+10円という計算式からポンド/円の上値目標は183.93円近辺となります。
そして、このアセンディング・トライアングルを形成中なのが、豪ドル/円、NZ/円です。アセンディング・トライアングルは上抜けする確率が高く、オセアニア通貨も今後強気継続スタンスでいいでしょう。
(3)ディセンディング・トライアングルは、アセンディングの逆の形。下落するレジスタンスラインと水平なサポートラインから形成され、売り方が強い相場です。
現在、ドル/円相場の週足チャートがこの形状となっており、もし、サポートラインを割り込むと105.44円-100.74円=4.7円 → 100.74円-4.7円=・・・ということで96.74円近辺が下値目標となります。ユーロ/円のチャートもこの形、下抜けする確立が着分けて高いと思われます。
こうしてチャート形状から今後を占ってみると、ドル安がまだ継続するだろうことが予想されます。つまり米国債券の利回りは低く抑えられたままで、株は堅調に推移するだろうということ。低ボラティリティの相場が継続するため、高利回り商品、通貨に資金が流れ込むトレンドが続き、金利が比較的高い豪ドルや、利上げサイクルに入ったNZドル、そして早い時期に利上げに踏み切ることが予想されているポンドが強い相場がしばらく続きそうです。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
TwitterAccount
@hirokoFR
マネックスからのご留意事項
「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。