マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国の大学では卒業の時期を迎え、8月末までの夏休みに入っています。日本からの留学生も、それぞれの課程を修了し、多くが先週から今週にかけ帰国しています。
今年の大学卒業生は727万人で、昨年の699万人から4%増加し過去最多となりました。
このため、大卒者の就職は大変で、今も多くの学生が職を得るための活動を続けています。
国営企業や外資系(多国籍)企業、さらには中国国内の大手企業が人気を集めるのは当然ですが、厳しい状況を反映して、学生の選択もより現実的になっていると報じられています。
民間調査機関が、5月に全国の大学卒業予定者8,193名を対象に行ったアンケート調査の結果によると、希望する給与の額や勤務地について、過去数年に卒業した学生よりも期待が低下しており、結果、就職先の決定に関し学生が感じるプレッシャーも低くなっているそうです。
学生が受けるプレッシャーは、多くが親や親族など、周囲の期待によるものですが、今年は厳しい状況が広く知れ渡り、過大な期待に悩まされる学生が少なくなっています。
希望する月額給与(回答の平均)は、2011年の調査で過去最高の5,537元(約91,000円)となって以降、3年連続で低下し、今年は3,680元(約6万円)になりました。
北京市にある中国伝媒大学(マスコミ、報道関連の教育で有名です)を卒業する24歳の女子学生は、出身地の福建省でメディア関連企業への就職が決まり、月額3,000元程度を予想していた初任給が2倍の6,000元になったと喜んでいました。当初は北京での就職を望んでいたものの、男子学生に有利な状況を目の当たりにし、また高い生活費の問題も勘案して、故郷に戻り実家で両親と同居する道を選択しました。
これまでは、北京、上海や南部広東省の広州、深圳といった大都市に人気が集中していましたが、今年はより規模の小さな都市での就職を希望する学生が急増しているそうです。
選択肢を広げて就職活動を行っていることも、学生が受けるプレッシャーの軽減につながっています。
就職先の選択に当たり学生が重視する項目も、給与水準や勤務地のほか、最近では入社後の教育研修や昇進の機会が重要とされており、調査機関の担当者は、「学生の考え方が成熟してきた」と述べています。同担当者は、就職後も自身の能力を磨き、会社組織への適応力や周囲との協調性を身につけることが重要と指摘しています。
あわせて、政府に対しても、今後も増加する大学卒業生に対し、十分な就職機会を提供し、さらには起業を支援する政策を広く展開するよう希望しています。
日本では、来春卒業予定の学生の就職活動が続いていますが、今年は一部の業種で採用が難しくなっているなど、売り手市場の様相を見せていると伝えられています。労働市場での流動性が高まっているとは言え、新卒で就職した先での経験は、その後の社会人生活に非常に大きな影響をもたらすものです。
日本、中国ともに、学生が希望する就職先を得て、社会人としての船出が順調なものとなるよう、願いたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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