第119回 中国の米国債購入がドル/円相場を膠着させていた?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第119回 中国の米国債購入がドル/円相場を膠着させていた?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

アメリカがQE3量的緩和策の縮小を開始、ドルのバラマキ政策が少しずつ縮小していくことで、市場ではドル高となるとの予想が大勢だった2014年相場ですが、上半期は1月2日の寄付きの105.44円が最も高く、100.77円までのおよそ5円の円高となる意外な相場となりました。このところは101~103円台での膠着相場が続いていますね。ドル/円相場が上昇しない要因のひとつとして米国10年物金利が上がらないことが指摘されていますが、アメリカの金融政策がいよいよバラマキ縮小に入っているというのに、何故金利が上がらないのか。市場関係者の間ではこれを「コナンドラム(謎)」として訝しがっていましたが、その一因が中国にあったことが分かりました。

米財務省が16日発表した国際資本動向(TIC)統計で、中国の満期が1年を超える中長期米国債の保有残高は、14年1月〜5月に1072億1000万ドル増えたことがわかりました。1月〜5月の規模としては1977年の統計開始以降の最大で、昨年13年通年の購入額810億ドルを上回っています。たった5か月で昨年1年分を上回るペースで米国債を買い越していたわけです。国債が買われれば金利は低下しますね。金利が上がらなかったのは、中国が米国債を大量に購入していたことが背景にあったのです。

4月には、中国の3月末の中国の外貨準備備高は3兆9500億ドルに達し、2013年末より1300億ドル増えたことが明らかになっていますが、これは中国による人民元売りドル買い介入によって膨らんだものです。中国は景気減速が懸念されていますが、中国当局による介入には輸出企業への配慮とともに、元高を見込んだ投機資金の流入によるバブルをけん制する狙いがあるとみられます。

この介入によって中国人民銀行の外貨準備における「ドル資産」が膨れ上がったわけです。世界最大規模の中国の外貨準備、通貨別の内訳は公表されていないのですが、ドル建てが大部分を占めるとみられています。介入によって自国通貨である人民元を売り、ドルを買う行為自体はドル高要因ですが、その後、外貨準備におけるドルの割合が増加してしまうためにポートフォリオのリバランスを行い、増加したドルをユーロに換えたり、円に換えたりしているため、ユーロ高や円高を招いている可能性が濃厚だという指摘は一部外為専門家の間で話題となっていましたが、そうしたオペレーションで、米国債購入も行われていた、ということですね。

となると、ドル/円相場の行方は、中国が下半期にもこうした介入を継続するのか否かにもかかっているとみることができます。中国が輸出を支えるために人民元相場を安値に維持する政策を継続するならば、介入によって増加した外貨準備のドルで米国債を買い続けるでしょうし、そのドルは、円やユーロにリバランスされ、これが円高、ユーロ高圧力にもつながります。元安誘導、介入が続くようなら、ドル/円もなかなか上昇できない膠着相場が続くでしょう。逆に、中国が軌道を修正して元安誘導をやめ、米国債購入ペースが落ちるとなると、これまで抑えられてきた米国債利回りが急騰し、市場には大きなショックとなるリスクも孕んでいます。下半期はバブル崩壊懸念が高まっている中国の行方により注目が高まっていくのではないでしょうか。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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