第75回 根深い「食の安全」を巡る問題【北京駐在員事務所から】

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第75回 根深い「食の安全」を巡る問題【北京駐在員事務所から】

上海市の食肉加工メーカー上海福喜食品が、ラベルの貼替え等の不正工作を行い、使用期限切れとなった食肉加工製品をマクドナルドなど大手ファストフードチェーンに供給していたとのニュースが報じられました。
上海のテレビ局が、同社の工場への潜入取材を行い、不正が発覚したそうです。
主要な供給先はマクドナルド、ケンタッキーフライドチキンとピザハットで、いずれも中国全土に多くの店舗を有しています。
各社は上海福喜食品が納入した食材の使用を中止し、他の業者の納入品についても調査を行うと発表しています。一部の商品は代替品の調達ができず、店舗での販売を停止しているそうです。

また、取引規模は小さいものの、スターバックスやバーガーキングも、上海福喜食品の製品を使用していたとのことで、同社納入食材の使用中止と関連商品の販売停止を発表しています。
同社は日本のファストフードチェーン、コンビニチェーンにも食材を供給しており、影響は国境を越えて広がっています。

中国では食品に関する事件、トラブルが頻発しているのですが、今回当事者となった上海福喜食品は、米国の大手食肉加工メーカーOSIグループの子会社で、中国では比較的信頼度の高い企業と見られていたこともあり、新聞やテレビニュースは連日この事件を大きく取り上げています。
北京のマクドナルドでアイスクリームを購入した女性は、「当分マクドナルドでハンバーガーを買う気にはならない」と話していました。
一方で、南京市の大学生は、「食品に関する問題は日常茶飯事で今更驚かない。マクドナルドやケンタッキーは外食業界のリーダーなので、これからも変わらず利用するつもり」と話しています。中国人が食品についての事件、スキャンダルに慣らされてしまっているのを感じます。

中国では、日本の法令も参考にして、1995年に食品衛生法が、また2009年には食品安全法がそれぞれ施行されたのですが、食品の安全を巡る問題は後を絶ちません。
日本と比べますと、国土が広大で業者数も多く、検査や監督が徹底できないこと、問題発生後の損害賠償負担や行政罰、刑事罰が軽く、「やった者勝ち」となっていること、さらに消費者の側が慣れっこになってしまい、風評等によるダメージも小さいことが、不正行為に手を染める誘因になっています。
もちろん、根底には業者の、さらには中国社会にはびこる「拝金主義」の問題があります。

今回のような悪意による不正は論外ですが、中国では農作物の残留農薬や水・土壌の汚染(工場からの廃棄物等に加え、重金属汚染も深刻と言われています)等、解決が容易でない問題が山積しています。
冷凍品、冷蔵品の物流網も、日本ほどには整備されていないように思われ、店頭に並ぶまでの保存状態が気になるところです。
とは言え、心配を始めると食べられるものが無くなってしまいますので、対策にも限度があります。

スーパーマーケットなどの店頭に並ぶ商品を見ますと、賞味期限、消費期限が非常に長いことに驚かされます。保存料等添加物によるものなのでしょうか?
カット野菜やサラダなども、見るからに傷んでしまった商品が普通に売られており、購入時には入念なチェックが欠かせません。
問題解決のためには、監督の強化や厳罰化などに加え、業者や消費者に対する教育啓蒙に地道に取り組む必要があります。長く大変な道のりではありますが、関係者の努力に期待したいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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