第120回 いよいよレンジブレイクとなるか、注目の米4-6月期GDP 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第120回 いよいよレンジブレイクとなるか、注目の米4-6月期GDP 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

今週で7月が終わります。現在まで(7/28)のところ、7月のドル/円相場はわずかに1円21銭幅でしか動いていません。最も円高だったのが10日の101円06銭、円安だったのが3日の米雇用統計の時の102円27銭で、ほぼ1か月間、この間での値動きに終始しています。こうしたボラティリティ(変動幅)低下は今月だけのことではありませんが、先月6月の変動幅1円56銭よりも狭いということで、いよいよ煮詰まってきた感じですね。

レンジ相場には3段階あり、トレンドが終焉した後の乱高下の1段階、振幅が縮小し安定したレンジ幅が確認できるようになる2段階、そして、どんどん値動きが収束して煮詰まっていく3段階...ということで、このところの変動幅の低下で、このレンジ相場がすでに3段階目に入っているとみるならば、そろそろレンジをブレイクして大きなトレンドが発生してもいいのではないかという期待も高まってくるわけです。

では一体このレンジ、どちらにブレイクしてトレンドを形成するでしょうか。アノマリー(合理的な説明ができない現象)から見ると、8月は円高になる確率が高いとされています。1990年から過去23年を遡って検証するとドル/円相場が円安だったのはたった6回。17回円高だったということでアノマリーとはいえ、8月は年間で最大の円高確率を叩き出してきた事実を無視することはできません。

その背景には、8月の米国債の償還による資金返済と利払いが最も大きいからだ、という指摘があります。日本が米国債を買っていた場合の利息が米ドルで支払われるため、その利払いを円に替える際に起こる円買い圧力が一時的な円高に繋がるとの解説ですが、実際には償還分は再投資されるとか、現在では利払いの円転のボリュームは市場にインパクトを与えるほどではないなど、この説に否定的な見方も多くあるのが実情で、これだけを材料にして円高になるとみるのは早計です。
では何がきっかけとなるでしょうか。特に今週は米国から出てくる重要指標が多く、ひょっとしたら今週にもドル/円相場は動き出してダイナミックな相場を形成するかもしれない、と見る向きもあるようです。為替市場では毎月のイベントとなっている米雇用統計が1日金曜に発表されますが、その前にも注目指標が盛りだくさんです。特に明日30日(水)にはFOMC政策金利発表がありますし、その時間の前には雇用統計の前哨戦とされるADP雇用統計、そして米国の4-6月期のGDPが発表されます。私が最も注目しているのがGDPです。
リセッション(景気後退期)入りの定義をご存知でしょうか。リセッションとは好景気が中断し、生産活動の低下や失業率の上昇などが発生する現象で、さらに進行すると不況となります。米国では、GDP実質国民総生産が対前年比で2四半期以上、連続して減少した時をリセッションと定義しています。米国は今、景気が良くなってきているとされていますね。特に雇用関連指数が堅調なことから、利上げの時期を巡る思惑が焦点となりつつあります。ところが、GDPを見ると前回1-3月期は▲2.9%。もう1期つまり、今週水曜に発表される4-6月期のGDPが前年比で減少していれば米国はリセッション入り、ということになります。

2014年1月、2月は米国を歴史的な寒波が襲いました。大雪の影響による経済の悪化で、ある程度のGDP悪化は織り込まれていたのですが、それでも速報値ではプラス0.1%でプラスだったのですが、確定値ではマイナスに転落し市場関係者を驚かせました。しかしマーケットの反応は鈍く、あまりこれを材料にして売り込まれることはありませんでした。今回から新しいデータ算出利用となった医療支出などが大きく下方修正された影響があったことや、次の期4-6月期に関しては天候要因の回復による反動で、一気に拡大するだろうという期待が下値をサポートしたのです。現在までのところの4-6月期GDP予想値は+2.9%とかなりの高水準。中には3%越えの水準を予想している金融機関もあります。

つまり、前回が寒波という特殊要因であまりにも悪い数字だったために、今回のGDPは振れ幅が大きくなる可能性が高く、どの水準の数字が出てくるのかによって、マーケットの思惑は色々に分かれそうだ、ということです。

プラス2.9~3.0%という強い数字が予想されていますが、予想通りもしくはそれ以上の数字が出ると市場に米景気回復への安心感が広がり、株高、ドル高へ。予想より悪い数字となった場合は、ドル売り、米株売りとなる可能性が高く、その注目度は大きいのではないかと見ています。今回の数字でリセッションとなることはほぼ皆無ですが、前回1-3月期の数字が想定を超える悪い数字だったことを踏まえて、今回の発表によってどのように反応するのかを見極めることが今週のポイント。

個人的には、思わぬいい数字が出てドル高、雇用統計に向けてさらにドル高となるもまたしても雇用統計発表前後が高値で失速、というような値動きとなるのではないか、などとイメージしておりますが、投資における最終判断は皆さんご自身で慎重に!

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

TwitterAccount 

@hirokoFR

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧