第76回 海外旅行の普及でニーズも変化【北京駐在員事務所から】

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第76回 海外旅行の普及でニーズも変化【北京駐在員事務所から】

日本と同様、中国でも学校が夏休みに入り、旅行シーズンを迎えています。空港では家族連れや中高生の団体の姿が目につきます。
経済成長を背景に、海外旅行の需要も拡大しています。韓国では、国別の外国人訪問客数で中国が日本を抜き1位となりました。
日本でも、都市部や観光地では多くの中国人旅行客が見られます。
ちなみに、中国人の海外旅行先で一番人気の国はフランスだそうです。お金と時間があればやはりヨーロッパでしょうか? このあたりは日本で海外旅行が普及した1970年代から80年代に重なって見えます。

海外旅行が一般的なものとなり、リピーターも増加した結果、起業家、投資家あるいは不動産開発業者など、事業に成功した富裕層の間では、高額、長期の「特別な」海外ツアーが人気となっているそうです。
上海の旅行代理店「上海鉄路国際旅行社」は、トルコ、ハンガリー、チェコ、オーストリア、ブルガリアとルーマニアを11日間で巡る鉄道の旅を企画し、人気を博しました。
10両の客車に乗客(ツアー客)は97名で、代金は32,000元(約52万円)です。中国国内でブルガリアやルーマニアへのツアーを催行している旅行会社は同社のみだそうで、希少価値のあるツアーとなっています。

「上には上」ということでしょうか、中国最大のネット旅行代理店Ctripの高額ツアー部門であるHHTravelは、ジュール・ヴェルヌの小説を地で行く「80日間世界一周ツアー」を販売しました。
代金は125万元(約2,000万円)ですが、5月の販売開始直後に、10名の定員が埋まる人気だったそうです。
80日間で24の国と地域を巡る旅程です。主な訪問先はグレートバリアリーフ(オーストラリア)、イースター島(チリ)、マチュピチュの遺跡(ペルー)、死海(イスラエル、ヨルダン)などで、北極と南極にも足を延ばすそうです。
移動手段は航空便35回、クルーズ船2回のほか、鉄道、ヘリコプターや砕氷船などが使われます。HHTravelでは、1年前からホテルを予約するなど周到な準備を進め、また経験豊富な添乗員2名を確保しているそうです。
うち1名は30年の経験を有する香港人ですが、「大陸の旅行客はリクエストが多く大変」といささか神経質になっています。
80日間の旅行は想像するだけでも大変なものですが、トラブルなどに見舞われることなく、参加者が行程を満喫できるよう、願いたいと思います。

中国は、旅行業界にとり極めて有望な市場と見られています。
出版社と旅行代理店が、旅行好きの富裕層203名を対象に行った調査によると、回答者は過去3年間に平均で25,000米ドル(約255万円)を旅行に消費し、またこれまでの訪問先は平均で40ヶ国に達するそうです。
40ヶ国以上を訪問した人々を対象に集計したところ、年間で36日を海外で過ごしており、このうちの半分がレジャーとなっています。また個人資産は平均6,600万元(約11億円)で、年齢は44歳です。
最近では、事業に成功し、後継者に道を譲って引退した高齢者が、余生を楽しもうと長期、高額の旅行に出かけることも増えているそうで、印刷会社を娘夫婦に譲った中部浙江省の62歳の男性は、2年前に80日間世界一周ツアーの企画を目にし、迷わず夫婦での参加を決めたと話していました。

海外旅行が普及するに連れ、「団体ツアーで観光、食事とショッピング」に飽き足らなくなった人達の間では、特定の目的を持ち、訪問先を厳選した旅行が人気になっており、業界では「体験」がキーワードになっています。
このあたりは、数十年前の日本と同様ですが、変化の規模と速さは日本を遥かに上回るものです。
遠からず、世界の至る所で中国人観光客が、また中国語の案内が見られるようになるのでしょう。

中国人旅行客は、そのマナーが日本やヨーロッパ諸国などで問題視されていますが、これもいずれは情報が広まり、解決に向かうことでしょう。
「百聞は一見にしかず」で、日本を含め外国を直接目にする中国人が増えることで、様々な偏見や誤解が解消され、正しい理解が広まることに期待したいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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