第32回 「織り込み済み」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第32回 「織り込み済み」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。極端な豪雨が頻発した梅雨がようやく明け、本格的な夏がやってきました。春先の冷夏予報はなんのその(笑)、今年もどうやら酷暑となりそうな勢いです。酷暑は昨年もテーマに書いたことがありましたが、今年も同じ状況となる可能性があるかもしれません。ちなみに、その時は酷暑関連銘柄というよりも、酷暑の年は厳冬になりやすいとの経験則に基づき、そちら関連の模索を提案いたしました。実際、昨冬は関東でも大雪となったことは記憶に新しいところです。今回は事前が冷夏予報であったこともあり、酷暑関連銘柄の正面突破もまた当面の選択肢の一つに浮上してくるのでは、と期待しています。

ただ、このコラムではそんなストレートなテーマは避けたいと思います(笑)。今回、「酷暑」ではなく敢えて取り上げるテーマは「織り込み済み」です。「テーマ」とは言い難いネタですが、頻繁に株式市場で交わされる言葉でもあり、一度言及してみたいと思っていました。株式投資をされる方は必ずどこかでこの言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。マスコミなどでは尤もらしく「材料は織り込み済みだった」といった相場解説が聞かれることも多々あるはずです。例えば、現在は第一四半期決算の発表最中ですが、好業績であったにもかかわらず、株価が大きく売り込まれてしまうケースは少なくありません。こういった時は往々にして「好業績は織り込み済みだった」といった説明がなされます。では、この解説で何人の方が納得されているのでしょうか。筆者は、「そんなのわかんないよ」というのが多くの、特に個人投資家の率直なところではないかと想像しています。

実際、織り込み済みであることを明確に、端的に確認することは不可能です。そして後から、織り込み済みであったことがわかるというのが現実です。先ほどの第一四半期決算の例はその典型ですが、好業績にもかかわらず株価が下がって初めて、「織り込み済み」であったことが確認できるのです。身も蓋もない言い方ですが、結果を見て論じるのは誰でもできることですし、投資家にとっては結果が出る前に欲しい情報を後講釈でもらっても意味がありません。そういった意味ではマスコミなどが相場解説で「織り込み済み」とする説明にはあまり付加価値はない、ということになります。とはいえ、株式投資を考えるうえで、この「織り込み済み」というファクターは決して無視のできない、むしろ非常に重要な要素であることは間違いありません。最大のポイントは、その後からでしか検証・確認できないという構造にどう対応し、「織り込み済み」を事前にどう見極めるか、にあります。

その方法への正解はありません。機関投資家であれば日々のニュースフローやアナリストの活用によって予想することもできますが、個人投資家ではそうもいきません。では、どうするか。ここではバリュエーションの活用をお勧めしたいと思います。バリュエーションとは、PERなどの株価指標であり、例えばPERが○○倍なら高い、××倍は安いなど、株価の水準判断に用いられています。多くは単純に何倍なら高い(安い)という見方をされますが、ここは是非発想を逆にして考えてみましょう。そもそもPERの高い(安い)状態を株式市場が放置している、ということは、本来の理屈に合いません。このことは、PER算出の基礎となっている利益の見通しが実はもっと違う水準になり得る可能性があると株式市場が見込んでいる、ということに他なりません。このことこそが所謂「織り込んでいる」という状態なのです。何を以ってバリュエーションが高いか安いかを考える必要はありますが、そこさえしっかりと判断基準を持っていれば、利益をどの程度まで「市場が織り込んでいるか」ということが計算できるのです。バリュエーションなどは難しいしよくわからない、と思われる方も少なくないかもしれません。しかし、これを知っておくことのメリットは非常に大きなものがあります。是非、面倒がらずにバリュエーションを勉強してみてください。なかなか深くて面白いですよ。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

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