第121回 何故下落?NZドルは天井をつけたのか 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第121回 何故下落?NZドルは天井をつけたのか 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

NZドル/ドルが軟調です。直近の値動きを見ると7月10日に天井を付けてしまったようにも見えます。2009年3月から続いた5年間にも及ぶ上昇のサイクルが終わってしまったのでしょうか。

2014年3月、NZの中央銀行にあたるRBNZは政策金利の引き上げに踏み切りました。以降、4月、6月、7月と計4回の利上げを実施し、1月時点で2.5%だった政策金利は3月で3.5%にまで引き上げられています。実はRBNZが利上げに踏み切った3月より前、2月くらいからマーケットではすでにNZドル買いが加速しており、政策金利の引き上げはかなり前から市場に織り込まれ上昇を続けてきました。

ところが、7月24日のRBNZでは声明で「一定期間のアセスメントが必要としている」とし、今回の利上げ発表後にこれまでに行った利上げの効果を検証することを示しました。つまり、次回会合では政策金利が据え置かれる可能性が高いとみられます。4回継続された金利引き上げのサイクルが一旦打ち止めとなるという思惑から、NZドルは大きく売り込まれているのです。実際にNZドルの下落が始まったのは7月10日からであり、マーケット関係者はこの「利上げサイクルの打ち止め」を予想し発表のある24日よりも前にNZドルの利食いに回っていたことが見て取れます。

加えて7月会合の声明文には「現在のNZドルの水準は正当化されず、持続不可能で大幅下落の可能性」という文言が見られ、NZドル売り介入をも匂わせています。NZドルが高くなるのが困るなら、何故RBNZは4回も利上げしてきたのでしょうか。

利上げの背景には過熱する住宅市場を沈静化させたい思惑がありました。2011年のクライストチャーチ地震の復興需要を見込んだ投資が過熱し、住宅価格は上昇の一途をたどってきていたため、NZは昨年10月から住宅融資規制を実施してきたのですが、その効果は大きくなく、金利を上げることで引き締めるしかなかったのです。

ところが、NZには同時に通貨高を避けたいという思惑も。昨年10月、大手格付け会社ムーディーズがNZ国債の格付けの引き下げを検討したとの報道がありました。最終的に格下げは逃れていますが、ムーディーズは最上格の「トリプルA」の格付け保有国のなかでNZは国際収支の赤字額が最も大きいと指摘しています。NZは住宅価格がバブル化している一方で、一般物価はインフレとはなっていないばかりか赤字国であるのが実情。実体経済には力強さがないのに、地震という特殊事情がきっかけとなり不動産価格が上昇してしまっているといういびつな状況にありました。
この赤字部分が今回の利上げ休止の背景にあるようです。

NZの主要輸出品は乳製品。世界乳製品取引価格指数は現在下落基調にあり、直近の価格はピークから4割もの下落となっています。2013年中国が一人っ子政策緩和を決めたことで中国からのミルクなどの消費需要に応えようと、世界が一斉に乳製品の供給を増やしたことで需給バランスが崩れたとみられており、乳製品価格の下落がNZの主要産業である乳製品輸出での収入減に繋がってしまうことが懸念され始めているのです。NZの乳製品輸出産業の割合は全体の25%にも及ぶという試算もある中、乳製品価格動向が今後のNZドル動向のカギとなってくると思われます。月2回開催されるGlobal Dairy Trade(世界乳製品オークション)で乳製品価格が決められていますが、乳製品価格とNZドルは相関性が高いため、下げ止まりが見られればNZドルも持ち直してくるでしょう。

日、米、欧が低金利政策を維持する中で、NZの政策金利は3.5%。乳製品価格に落ち着きが見られれば再びイールドハント(利回り狩り)の相場に回帰し、高金利通貨の強さが戻ってくるものと思います。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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