第77回 期限切れ食肉使用事件のその後【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第77回 期限切れ食肉使用事件のその後【北京駐在員事務所から】

上海福喜食品による期限切れ食肉使用の問題が発覚し、同社の最大の取引先の一つであるマクドナルドは、同社が製造する食材の使用を停止しました。
この結果、中国全土、2,000店に上るマクドナルドのレストランでは、バーガー類の提供が難しくなり、来店客が大きく減少しています。


当事務所の近くにもマクドナルドの店があるのですが、客足はまばらで、今朝は近くに陣取った屋台(中国式のスナック類をその場で調理し提供しています)に朝食を求める客の長い列が出来ていました。
今回の事件で、マクドナルドも心配になりましたが、私などは「屋台はもっと心配では?」と考えてしまいます。


マクドナルドでは、上海福喜食品以外の既存取引先からの食材購入を増やしており、徐々にバーガー類を提供できる店舗が増えているそうですが、肉類だけでなく野菜類も上海福喜食品からの仕入があり、また食材全般について見直しを進めた結果、今度は野菜の調達に支障が生じ、「ハンバーガーは提供できるがビッグマックは出せない」等の事態に陥っているそうです。
まだまだ混乱は尾を引きそうです。

マクドナルドと並ぶ大手取引先である百勝飲食集団(米国Yum! Brands社の中国部門で、ケンタッキーフライドチキンとピザハットを展開しています)も、中国での上海福喜食品との取引停止に加え、同社の親会社である米国OSI社と全世界で取引を停止するとしており、こちらも影響の広がりが懸念されます。
百勝社では、食材供給業者に監視カメラの増設など管理体制の強化を求めるとともに、不正行為を通報した者に対する報奨金を増額し、再発防止を図っています。
ちなみに、中国全土でケンタッキーフライドチキンの店舗は4,500、ピザハットは1,200を超えます。
北京でも、ケンタッキーの看板はマクドナルドよりも遥かに多く目にします。

今回の事件は、発覚の経緯(テレビ局記者による工場への潜入取材)などから、「当局公認の外資企業たたきではないか?」等の憶測も呼んでおり、様々な形で波紋を広げています。
百勝社では、「当局による調査には全面的に協力しており、また当局の指示あるいはガイドラインに従っている」との声明を発表していますが、その当局も、これまで上海福喜食品の不正行為を知りながら見逃していたと言われており、「誰も信用できない」といった疑心暗鬼が広がっています。今回の事件は、規模、影響の大きさと外資系大手での発生という点で特に注目を集めていますが、背景にある中国の衛生に対する意識の低さや金儲け主義は、食の全てに共通の課題で、かつ容易に修正できるものではないように思われます。


日本でも、中国産の食品や食材への懸念が高まっており、食品メーカーや外食業者は対応を図っていますが、中国メーカーへの依存度は高く、他国の業者への代替は容易でないものと思われます。
「高くても国産品を」との意見もあるものの、絶対量の確保という点では、国産品への代替はもはや無理でしょう。
今回の事件は、日本の関係企業や消費者にも、重い課題を突き付けるものになったと再認識されられました。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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