第33回 「女性登用」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第33回 「女性登用」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。先日、4-6月期のGDPが発表となりました。年率マイナス6.8%。これはなかなか微妙な数字で、これをどう見るか頭を悩ませるというのが市場関係者の率直なところではないでしょうか。事前のエコノミストの予測はマイナス7%程度でしたので、これとの比較では「想定の範囲内。むしろ堅調」という見方もできるでしょう。実際、株価や為替の反応も限定的で、「ノーサプライズ」として受け止められている印象です。一方、エコノミスト予測は直近にバタバタと下方修正されたものであり(それまでは概ねマイナス4~5%というのがコンセンサスだったように記憶しています)、数字的にサプライズはなくとも、実態は要警戒だ、というスタンスも巷間漏れ聞こえてきます。見方が大きく分かれる時というのは、景気の流れの転換点となるケースが多々あります。2014年に入って停滞感の増してきたアベノミクス相場ですが、ここから一段上げにシフトしていくのか、それとも失速感を増していくのか、今後1~2ヶ月はどうもその岐路にさしかかっているように思います。

さて、今回取り上げるテーマは、「女性登用」です。政府は新成長戦略において、「2020年までに社会の指導的地位に占める女性の割合を3割以上にする」と掲げました。現在は約11%とのことですから、現状よりも女性管理職は約3倍になる、ということになります。生産者人口の減少が予測される中、女性の就業拡大は喫緊の課題となることに加え、企業においても多様化する価値観への対応として女性の視点の重要性が増していることがその背景にあります。既に男女雇用機会均等法施行から30年弱を経て、女性が登用されることはもう珍しくありません。今度はその人数をもっと増やそうというもの。このことは日本を再度活性化させる起爆剤になるのではないか、と期待しています。これに対して、「(男性に対する)逆差別ではないか」「女性も昇進を望んではいない」といった反論もあるようです。しかし、女性が堂々と「昇進を望んでいる」とは言い難い雰囲気が一部にあることも事実です。そういった「隠れたやる気」を拾い上げ、これまでの慣習や意識を変えるためにはこういった定量的な目標や指針が必要だと筆者は考えています。人口が減少する中、能力とやる気のある女性はそもそも多く、それを活用しない手はありません。それに負けじと、男性もまた切磋琢磨することとなれば、よいことではないでしょうか。

では、株式投資として女性登用ではどんな業種が注目できるでしょうか。端的には、アンチエイジングなどの美容・健康分野や、女性用スーツなどの衣料となるのかもしれません。しかし、ここではもう一つ捻って、家事・介護・育児分野を取り上げたいと思います。管理職になる年代を考えれば、プライベートでは育児・介護が圧し掛かってくる可能性は高いでしょう。男性もその責を分担すべきなのは当然ですが、現状はこれらの懸念から管理職への昇進を躊躇している女性も少なくないのではないか、と想像します。換言すれば、安心できて使い勝手のよい託児システム、介護システム、家事委託などにはビジネスチャンスがあるのでは、と考えることができます。託児所や介護施設は既にたくさんありますが、いずれも「管理職を目指すくらい働きたい」女性のニーズを満足しているかとは言い難いものがあります。これら既存の設備・システムも、女性の行き方の多様性に対応するように、多様なサービスが求められることは必然なのかもしれません。これまでの殻を打ち破るようなサービスに着手する育児・介護、家事サポートの企業が出てくれば、女性登用の重要なインフラとして大きく注目されるのではないか、と考えます。

もう一つ。通信分野や情報セキュリティ分野にも注目します。やはり育児・介護・家事における女性の負担を考えた場合(男性も負担すべきなのは当然ですが)、在宅での業務という切り口も増えてくるでしょう。今や自宅にPCがあれば、データ通信やネットによって大半の業務は遂行が可能です。そうはいっても現在は会社に毎日出勤する方がほとんどですが、ほとんどを在宅で処理というケースも今後は増加すると想像します。データのやりとりに伴う通信環境やその際のセキュリティ分野には根強い需要が期待できるかもしれません。

人口が減る日本においては、女性の活用は不可避だと筆者は考えます。同時に、コラムを書きながら、女性に負けないように男性もがんばらねば、と意を強くいたしました。お盆をだらだらと過ごした自らを振り返り、現在、反省しきりです・・・。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

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