第124回 やっぱりドル高?!2014年相場年初展望回帰か 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第124回 やっぱりドル高?!2014年相場年初展望回帰か 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

1年近くもの間79~81レベルで膠着していたドルインデックスがお盆明けの8月18日の週に弾みをつけて82台にまで上昇してきました。ドルインデックスとはドルの価値を総合的に表すもので、その加重平均のウェイトは ユーロ 57.6% 円 13.6% 英ポンド 11.9%などとなっています。ドルインデックスが大きな上昇を見せているということはつまり、ユーロ安であり円安であり、ポンド安であるということ。米国10年物の利回りは2.4%近辺で上昇のトレンドにあるわけでなく、米金利が落ち着いているにもかかわらずドル高となってきたというのが、この8月の特徴的な動きとなっています。

米国の利上げの時期を巡る思惑は大きくなっています。8月20日のFOMC議事録や8月22日のジャクソンホールシンポジウムでのイエレンFRB議長の講演への市場関係者の注目は大きく、これらのイベントがさらにドル高を加速させていますが、実際には金利が大きく上昇していないのに、思惑だけでドルが買われているようです。

というのもこのドル高、「ドルが高い」というだけが材料ではないのです。ユーロ安に歯止めがかからないことでのユーロ安からの米ドル高という側面も。ECBは6月に民間銀行がECBに預け入れる余剰資金の金利を0%からマイナス0.10%に引き下げ、ECBとしては初めてとなるマイナス金利を導入しました。また、先週ジャクソンホールではECBドラギ総裁も講演を行っていますが「ECBはさらに政策のスタンスを調整する用意がある」「ABSプログラムの準備は迅速に前進しており、一段の信用緩和に貢献するだろう」と発言、これだけユーロ安が進んでいるというのに、量的緩和も辞さない姿勢を示しました。現在のユーロ安は「国策に逆らうな」というシナリオに沿ったポジションが形成されているという見方もできますが、もう一つの懸念は対ロシア制裁に発展したウクライナ問題が欧州経済にも影を落とすのではないかという不安。このところは最後の砦であるドイツの景況感まで減退しており、ユーロが最弱通貨の様相を呈しているということが、ドル高に繋がっているとも見ることができます。

さらに、イギリスも景気が堅調と見られる中、インフレ抑制のための利上げが近いと目されてきたのですが、8月の住宅販売希望価格が大幅下落しました。7月消費者物価指数(CPI)では上昇率は前年比で市場予想を下回り1.6%に減速、7か月連続でBOEが目標とする2%を下回っています。ということで、年内の利上げ観測は著しく後退してしまいました。現在のところ来年の第一四半期になるという予想が大勢となっているようですが、このところはBOEのカーニー総裁のコメントがブレまくっていることからこの見通しもいつ変化するかわかりません。インフレ報告では利上げに際しては賃金動向を注視していくとしていましたが、その後、実質賃金が上向くまで利上げを待つ必要はないと語っています。7月のBOE議事録では3年間全会一致だった政策金利決定について、2名が早期利上げの主張に回ったことが明らかとなり、大きな変化としてマーケットを驚かせ、この瞬間はポンド買いが旺盛となりましたが、その後発表されたCPIをみるとやはり早期利上げの可能性は低いと思われます。このポンド安も裏を返せばドル高要因に繋がっています。

そして日本は拡大する貿易赤字がドル/円の下値をがっちりサポートしています。原発が停止して以降、海外からエネルギーを輸入しなければならず、このためのドル買いが膨大なのです。また、日銀による量的緩和実施中であり、さらにアベノミクスに伴いGPIFによる日本株買い、外貨買いによる円安圧力も強烈で、円安による米ドル高も背景となって、消去法的に「ドルを買うしかない」ムードが強まってきていると言えるでしょう。

そもそもテーパリング開始で、新興国などに投資されていた過剰流動性マネーが米国に還流することでドル高基調にはなっていたのですが、加えて米国が本格的に利上げ時期を模索し始めれば、利上げが最も近い景気がいい最強の国としての米ドルに資金が集中するものと考えられます。ということで、ドル/円相場もいよいよ米国の量的緩和が終わると目される秋以降に本格的に105円を超えていよいよ本物の上昇トレンド開始となるのでは?と見ています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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