マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国で広く愛飲されている蒸留酒の「白酒」は、全国各地に多くのメーカーがあり、様々なブランドの商品が販売されています。
中でも、日本でも有名な「貴州茅台酒」は、中国の「国酒」とも言われ、国賓を招いての晩餐会での乾杯にも使われるなど、白酒のトップブランドとして君臨しています。
ウィスキーのような「古酒」もあり、50年ものは一瓶4万元(約68万円)、また80年ものは同じく一瓶38万元(約640万円)で販売されています。ここまで高価になると、飲用というよりは完全に特殊な贈答商品になってしまいます。
また、そもそも本物の茅台酒は、政府機関等に優先的に供給され、市場にはほとんど流通していないと言われており、市中で販売されている商品の多くは偽物だそうです。
そのような茅台酒ですが、習近平政権発足後の「公費濫用禁止令」により、官公需が激減し、価格も急落しています。
以前から、茅台酒については、商品の真偽の問題に加え、価格の不透明性(投資対象としても売買されるため、価格が乱高下します)が指摘されており、また若年層を中心としたワイン人気の高まりもあり、需要縮小が懸念されています。
このような状況に、製造元(中国貴州茅台酒股份有限責任公司)も危機感を持ち、流通改革により透明性を向上させることを検討しています。
具体的には、スーパーマーケットチェーンを運営する「永輝超市」ほか1社と合弁会社を設立し、全国の永輝超市の店舗中、主要な100店舗で同社製品を販売するほか、同社が直接ネット通販を手掛ける計画としています。
永輝超市は、中国でも特に白酒の消費が多い北部、西部で近年積極的に出店を進めており、一般消費者にとって、茅台酒がより身近なものになることが期待されます。
また、ネット通販については、以前は複数の企業と提携し販売を行っていたのですが、各社の価格設定が不透明との批判が強く、今年に入り提携が打ち切られています。
今後、同社は自ら通販サイトを立ち上げ、販売を行う方針としていますが、業界関係者からは、自社サイトに固執することなく、大手通販サイトとの提携も考えるべきとの指摘もされており、成否が注目されるところです。
「本物は市中にほとんど流通していない」と言われる茅台酒ですが、ほとんどのスーパーマーケットや専門店の店頭で目にします。「一体誰が買うのだろう?」という疑問も感じてしまいます。
偽ブランドやコピー商品は、多くの日本企業も悩まされている問題ですが、中国国内でも茅台酒やお茶の「龍井茶」など、偽物が横行する商品が数多く存在するようです。
中国ならでは、と言えなくもないのですが、消費者が安心して購入できるよう、偽物の撲滅を進めて欲しいものです。
良質の白酒は、アルコール度数が50度以上と高いものの、悪酔いすることがなく、優れた芳香と相まって中華料理の宴席には欠かせないものとされています。
近年では、若年層を中心とした嗜好の変化により、アルコール度数の低いものが人気になっており、また赤ワインなどに押され気味とも言われていますが、冬場の厳冬の中で、鍋料理とともに味わう白酒は最高と言う人も多く、特に地方では根強い人気があります。中国の伝統文化を象徴する酒として、流通の正常化が進み、一般市民も安心して楽しめるものとなるよう、望みたく思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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