マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
9月です。秋相場、最初の注目イベントは今週4日のECB理事会。通常の相場環境であれば、基軸通貨ドルの行方を占う米国の金融政策が最大の注目となることから、月初めの週は雇用統計の注目度が高まるのですが、今回に限っては現在のドル高は「ユーロ安からもたらされているドル高」の様相が強いため、「ユーロが下げ止まるのか否か」に市場の関心が集中しており、ECB理事会の注目が非常に高いのです。
先々週8月22日のジャクソンホールシンポジウムでECBドラギ総裁は「ABSプログラムの準備は迅速に前進しており、一段の信用緩和に貢献するだろう」と追加緩和について示唆しました。市場には9月のECB理事会で「非伝統的政策」に踏み切る可能性もあるのではないか?という期待が高まっていることから、ユーロの下落に歯止めがかからない状況が続いています。
皆さんはそもそも、「伝統的金融政策」と「非伝統的金融政策」がどう違うかご存知ですか?
伝統的金融政策とは、景気の過熱や急減速を防ぐため、中央銀行が政策金利の上げ下げで調節することです。これに対し、中銀がリスク資産の買い取りなどで特定の市場などに影響を与えようとする政策を「非伝統的金融政策」といいます。アメリカや日本は、ほぼゼロ金利政策の中で、これ以上金利を下げることでの緩和策が取れないことから、中央銀行が市中の金融機関からCP(コマーシャルペーパー)や社債、MBSと呼ばれる住宅ローン担保証券や、国債などを購入し、代わりに金融機関に現金を支払うことで市中に流通するお金の量を増やす金融緩和政策を取っています。これが「非伝統的金融政策」です。米国や日本はすでに伝統的金融政策ではどうにもならないところまで来ていたために、非伝統的金融政策に踏み切ったわけですが、いよいよ、欧州もこの「非伝統的金融政策」に踏み切らざるを得ないというところまで景気が冷え込んできた、、、デフレの入り口に立っているということなのです。
基本的にデフレ化する国の通貨は高いのですが、(日本がそうであったように)今ユーロが売られているのは、欧州もいよいよ非伝統的金融政策、つまり量的緩和政策に打って出てくるという予想に基づくもので、この政策を導入した後も、ユーロの下落が続くかどうかはわかりません。というのも買い取れるABSの規模もそれほど大きくはなく、いずれは国債を購入しなければ効果はないと思われるからです。この議論は長くなりますのでまた今度にするとして、そもそも、今週4日の理事会で非伝統的金融政策に踏み切れるほどの準備は整っていないのではないか、と見る向きも多く、今週はこの前のめりに欧州圏の国債を買っている向きのポジションが巻き返されるリスクがあるかもしれません。為替市場においても、IMM通貨先物ポジションにおける投機筋のユーロのネットショートは2014年8月26日発表の数字で▲150,657枚まで膨れ上がっており、ショートが偏りすぎとの指摘もあります。しかし過去最高のユーロショートは2012年6月8日の▲214,418枚ですので、まだまだ過去最高レベルには達していません。
今週のECBの出方によっては、一時的にユーロショートの買戻しでユーロが上昇するリスクも大きいと思うのですが、まだまだ売られすぎというほどでもなく、今回の非伝統的金融政策が見送られたとしても、そう遅くない段階での導入はほぼ確実となっているため、さらなるユーロ売りが膨らむリスクも捨てきれないのです。今週は、ユーロが一時的に下げ止まり巻き返されるか、さらに下落するか、という意味でECB理事会が最大の焦点。そして、これにより、更にドル高が進む結果となれば、ドル円の上昇も加速する可能性が大きいと思われます。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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