第81回 不法移民、不法滞在者の増加【北京駐在員事務所から】

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第81回 不法移民、不法滞在者の増加【北京駐在員事務所から】

日本で、不法移民、不法滞在者の問題と言えば、中国、韓国、東南アジアや中南米からの労働者のオーバーステイ(ビザの期限切れ後の残留)、偽造旅券の使用や偽装結婚などが代表的なものとなっています。
出入国記録から検知された日本国内の不法残留者の数は、1993年には30万人近くに達していましたが、入国審査制度の厳格化、不法残留者問題に関する認知の高まり、さらには日本の景気低迷により年々減少し、本年1月1日現在では59,000人余りとなりました。不法滞在者が犯罪に関係するケースも多く、取締りの更なる強化が望まれます。

日本では「中国人の不法滞在」というイメージですが、中国では近年、経済的な結び付きを強めているアフリカ諸国からの不法移民、不法残留者の問題が深刻化しています。
中でも、南部の広東省及びその省都である広州市は、アフリカからの来訪者が多く、不法残留者も増加しているため、対策の強化が求められています。

広州大学が研究機関と共同で行った調査によると、広州市には移民を除く一時滞在の外国人が192万人おり、中国の都市の中で最多となっています。このうち約半分がアフリカ諸国からの来訪者で、広州市の良好な気候、豊富なビジネスチャンスや外国人に寛容な気質が、来訪者の増加につながっています。
一方で、不法移民、オーバーステイや資格外就労の問題も広東省全域で深刻化しており、対策が急務となっています。

2007年に、広東省では7,000人以上の外国人が、不法滞在により起訴されました。翌年の2008年には13,000人を超え、このほかに不法移民210人が、26種類の犯罪に手を染めたとされています。6年前で既にこのような状況ですから、現在は一段と悪化しているものと思われます。

研究機関の調査担当者は、政府はドイツなど西側諸国が講じている対策を参考にして、不法入国、資格外就労やオーバーステイの問題に対処すべきと指摘しています。
具体的には、不法移民の収容施設の拡充、不法就労者を雇用した者への取締りと罰則の強化、さらには不法滞在者に住宅や銀行口座等の便益を供与した者への刑事罰の導入等を求めています。
広東省政府は2011年に、省内に居住し、就労している外国人の管理を強化する制度改正を行ったそうですが、その後海外からの渡航者がさらに増加したため、追加的な対策が求められています。が、そこは不法滞在者も知恵を巡らして取締りの網をかいくぐることでしょうから、「いたちごっこ」となる恐れも大と思われます。

中国では、外国人の行動は厳格に管理されており、例えば宿泊先(ホテルなど)については、到着(入国)後24時間以内に、警察に届け出る必要があります。
ホテルでは必ずパスポートのコピーを取られます。これに基づき、ホテルが警察への届出を代行してくれるのですが、例えば中国人の友人の家に宿泊する等の場合には、自身で派出所に出向き届け出なければいけません。
その他、航空券と同様に、列車のチケットも購入時の実名登録が必要で、乗車時のチェックとあわせ、行動、移動は全て当局の監視の下にあると言えます。後ろめたいことが無い限り、何ら心配する必要はないのですが、それでも多少の緊張感と煩わしさはあります。

日本が、これまで多くの外国人を引き付けてきたように、経済成長が続く中国はアフリカ等発展途上国の人々にとり、多くのチャンスが転がっている魅力的な国と映っています。
来訪者が増加すれば、不法滞在者等の問題が大きくなることも必然と言えます。出入国管理の適切な運用と、法令違反行為に対する罰則の強化等により、経済、人的交流の活発化と不法滞在者問題の解決が両立されるよう、願いたいと思います。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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