第82回 国別国際競争力ランキング【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第82回 国別国際競争力ランキング【北京駐在員事務所から】

毎年1月に世界のリーダーが集うことで知られる「ダボス会議」の主催者である世界経済フォーラム(WEF)が、このほど世界144の国と地域を対象として算出した「国際競争力ランキング」を発表しました。
各国のインフラ、教育水準、金融市場の整備状況、ビジネスの洗練度などを指数化し、ランク付けしています。

上位10ヶ国のランキングと、前年からの変動は以下の通りです。

1位 スイス (前年と同じ)

2位 シンガポール (前年と同じ)

3位 米国 (前年は5位)

4位 フィンランド (前年は3位)

5位 ドイツ (前年は4位)

6位 日本 (前年は9位)

7位 香港 (前年と同じ)

8位 オランダ (前年と同じ)

9位 英国 (前年は10位)

10位 スウェーデン (前年は6位)

順位に若干の変動はありましたが、10ヶ国の顔ぶれは昨年から変わらずとの結果になりました。

11位以下では、アラブ首長国連邦(UAE)が前年の19位から12位に、マレーシアが24位から20位に、タイが37位から31位に上昇しているのが目立ちます。

中国は28位で、前年から1ランクアップとなりました。
アジア諸国では、シンガポール、日本、香港、台湾(14位)、マレーシア、韓国(26位)に次いで第7位となっています。
また、成長国としての期待が高いBRICS諸国中では、ロシア(53位)、南アフリカ(56位)、ブラジル(57位)及びインド(71位)を抑えてトップとなりました。
中国は調査項目の多くで若干の向上が見られ、今回1ランクの上昇につながりました。
中でも、教育水準についての評価が大きく上昇したそうです。

WEFは、中国を「効率性(例えば低い生産コスト)で優位に立つ中進国」と「革新性で優位に立つ先進国」との境界に立っていると評価しています。
賃金上昇等により、生産拠点としてのメリットが低下している中、巨大な国内市場を有するとは言え、今後技術革新等でどの程度優位性、独自性を打ち出すことができるか、重要な局面に差し掛かっていると言えます。

一方、WEFは中国について、汚職、テロや治安の問題、法制度や手続面での透明性・信頼性の欠如などが弱点と指摘しています。

日本が、高度成長期からバブル期を経て先進国の仲間入りを果たしたように、中国も年々向上する生活水準を支えていけるだけの高付加価値の産業、労働機会を創出していく必要があります。
中国を専門とする英国人コンサルタントは、今後の競争力強化に向けて、「市場経済化」、「行政の効率改善」及び「明文化されたルールに基づく社会システム」が重要と述べています。
いずれも、先進国となるためには避けて通れないものですが、現在の共産党一党支配の体制でこれらが実現できるものか、多少の疑問も感じられます。

そして、これまでも本コラムで取り上げて参りました「貧富の差」が、今後更なるボトルネックとなるように思えてなりません。「世界の工場」から「世界の市場」への脱皮の過程で、農村部、内陸部などの貧困問題を放置せず、全体の底上げを図ることが出来るのか、政府のお手並み拝見ではありますが、実現は容易でないように思われます。

以前にもご報告を申し上げましたが、中国に暮らしておりますと、高度成長期の日本、バブル期の日本、そして現在の日本を同時進行で見られるように思います。
今後、中国がどのような方向に進んでいくのか、国際競争力ランキングをきっかけに改めて考えさせられてしまいました。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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