第128回 豪ドルにまで波及したドル高、ドル高は始まったばかり?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第128回 豪ドルにまで波及したドル高、ドル高は始まったばかり?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ユーロや円、ポンドに対してだけでなく、豪ドルも大きな下落に見舞われた9月。貿易赤字国に転落し構造的に円安に転じた日本円や、マイナス金利や追加緩和に踏み切った欧州ユーロ、スコットランド独立の懸念が高まった英国ポンド、利上げを停止通貨高に懸念を示したニュージーランドドルなど、明らかに「弱い材料」が存在していた通貨の下落が大きかったのですが、豪ドルには特に下落する理由もないままに9月8日を境に大きく下落しています。米ドル一人勝ちの様相です。一体何が起こっているのでしょうか。

特に9月に入ってからのドル高が顕著であり、主要6通貨に対するドルの価値を表すドルインデックスは、先週24日に85.15と2010年の88.47以来の高値水準にまで上昇しています。ドルインデックスはユーロ・円・ポンド・カナダドル・クローネ・フランに対するドルの平均価値を表し、この数値が大きくなるほどドルの価値が高くなることを意味します。先週までで11週連続上昇で1973年に指数が公表されるようになってからの最長上昇記録となっています。 主要32カ国のうち6月以降ドルに対して通貨が値上がりした国は中国・タイなどたった6カ国しかありません。

円やユーロ、ポンドなどに独自の弱い材料があったことに加えて、米ドルは9月17日に開催されたFOMCでFRBメンバーにより金利見通しの内容を受けて、思ったよりも早いタイミングでドル金利が上昇するのではないか、という思惑が一気に市場に広がったことも、ドル高加速の背景でした。しかし、豪ドルやNZドルなどの下落はFOMCよりも前に崩落が始まっており、ドル金利上昇が米ドル高、オセアニア通貨安となった理由とするには無理があります。

私は仕事柄多くのマーケット関係者にお話を伺う機会がありますが、このところのオセアニアの下落は奇妙だといいます。何か巨大なポジションの変更が行われている気配があると、指摘くださった関係者の話が非常に興味深いのでご紹介いたします。

1) 9月期末に向けてのドル不足

為替スワップやベーシススワップ取引では、9月末を控えてドルの調達コストの上昇が際立っているのだそうです。この夏以降、日本勢の外債投資に絡むドル資金調達需要が高いにもかかわらず、ドルの出し手である外国金融機関が9月期末を控えて、ドル資金の運用、つまり市場への放出を手控えていることが背景で、ドルの出し手がほとんどいない状況が続いているのです。まさに今日30日が9月末となりますが、ドル不足によって高値でも取引せざるを得なかったという状況が明日10月から落ち着きを取り戻せるのか否かに注目です。

2) 世界の中央銀行のポートフォリオリバランスの可能性

これまで長きにわたって米国はドル安になる政策を取ってきました。特にリーマンショック以降のQE政策でドルの価値は一層希薄化し、世界の中央銀行は外貨準備の中のドルを円に換えたり、ユーロに換えたりして、減価する米ドルの保有額を減らしてきました。しかし、ドルインデックスのチャートを見れば一目瞭然ですが、ドルインデックスは今年7月に昨今のレベルの底入れ完了、急激に上昇開始となっています。こうなると、ユーロやポンド、円などを保有していると外貨準備の資産が減価してしまいますね。今後米ドルが上昇する時代に入る、というなら米ドルを持たざるリスクは大きいということになります。ということで、中国や台湾、韓国、北欧、中東など世界の中央銀行がこれまで保有額を減らしていた米ドルの保有比率を上げるためにポートフォリオリバランスを行っているのではないか、という推察は成り立たないだろうか?(どこにもソースはありません、長年為替に携わってこられたある金融畑の方の指摘です)もし、9月相場においてはこの事実がなかったとしても、世界の中央銀行はいずれポートフォリオリバランスの行動に出てくるでしょう。つまり、このドル高はまだまだ「始まったばかり」と考えられるのです。ちなみに中国の外貨準備額は3兆9932億ドルもあります。中国だけでこのインパクト!

※そして昨日29日月曜日、NZの中央銀行RBNZは、8月にネットで5億2100万NZドルを売却したことを表明しました。つまり、自国通貨を売り通夜安誘導を行ったということ。為替関係者が指摘していた中央銀行の外貨準備による米ドル高の一端が明らかとなりました。

ルー米財務長官は9月17日、強いドルが常に米国の最大の利益になると述べました。米国はドル高を容認すると世界に表明したのです。他方、欧州はユーロ安誘導政策へ、そして円もまた、需給構造からもう円高にはなり得ません。こうした中、これまで金利が高いことで保有されてきた豪ドルやNZドルの保有にも見直しが入ったのではないか。つまり、「とにかく米ドルの保有を増やせ!」という動きがいよいよ始まったのです。米国の早期利上げ観測に加え、経常・財政収支の構造的改善で80年代の第1次、90年代の第2次に続き「第3次ドル高局面」に入ったということでしょう。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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