マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国政府が、中国語や中国文化の教育及び宣伝、ならびに中国と各国との友好関係醸成を目的として設立した教育機関「孔子学院」が、このほど設立10周年を迎え、北京市の本部や、世界各国の学院、教室で記念の式典が行われました。
2004年に、中央アジアのウズベキスタンに最初の学院を創設して以来、順調に規模を拡大し、海外の大学などの教育機関との提携により、現在世界の123ヶ国に、465の学院と713の教室(分校に相当)を有しています。
日本でも、2005年に開設された立命館孔子学院を初め、10を超える学院が設立されています。
学院、教室の数からも容易に想像できますが、10年間の活動は極めて大規模なもので、主な内容は以下の通りとなっています。
(1) 世界100ヶ国以上に、延べ20万人の中国語教師を派遣
(2) 世界110ヶ国以上の学生25,000名に奨学金を支給し、中国への留学と学位取得を支援
(3) 8ヶ国、12の大学で中国語専攻コースの開設を支援
(4) 54の言語で、中国語の教科書を作成し出版
孔子学院の事業展開により、世界各国で中国語を学ぶ学生が増加しており、特に東西冷戦の時代から強いつながりのある東欧諸国で、中国語の学習ブームが起きているそうです。
これらの国では、以前から中国語学習へのニーズがあったものの、各国の言語による教材が整備されておらず、また教師の力量にも問題があったため、孔子学院の教材作成と教師派遣が大変な効果を挙げたと言われています。
孔子学院での中国語学習をきっかけに、中国の歴史、文化や中医(伝統医学)などに興味を持ち、中国に留学する学生も増えています。
孔子学院については、中国政府が諸外国での影響力行使を目的としている等の批判もあり、各国政府や地元住民との軋轢を生じる事例もあるそうです。背後にある政府の意図等は別にしても、人口規模と経済成長を背景に、中国が政治、経済分野で存在を高める中、孔子学院は各国との関係の強化や「中国ファン」の育成に多大な貢献をしていると言うことができます。
1980年代、日本が高度成長期からバブル期に進む時期には、世界の多くの国で日本語の学習ブームが起きました。私は一時期オーストラリアにいたのですが、多くの高校で日本語の授業が行われ、多数の日本人教師が教鞭を執っていました。
当時、日本国内でも「外国人向けの日本語教師」が人気の職業になっていたことが思い出されます。
残念ながら、その後の景気低迷等により、日本のプレゼンスが低下したことも影響し、日本語の学習ブームは下火となってしまい、中国語にとって代わられたように思います。
中国語を日常的に話す人は12億人を超え、スペイン語及び英語のそれぞれ3億人強を抑え、人口規模では圧倒的な第一位となっています。
自然科学及び工学の分野では、過去の研究等の蓄積がありますので、今後も英語が共通言語として使われていくのでしょうが、ビジネスの分野では、今後中国語の存在がどんどん高まって行くように思われます。
日本では、外国語学習と言えばまず英語ですが、いずれは義務教育レベルでも中国語が広範に導入されるかもしれません。発音は難しいですが、漢字を共有するという点で日本人は優位にありますので、特に読解と筆記の力を伸ばすことで、中国との関係強化につながるのではないかと思います。
当然ではありますが、外国語教育、学習にも各言語の母国の地位、勢いが反映されます。
孔子学院開設10周年のニュースから、日本の地位の低下を痛感させられることになりました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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