第36回 「為替」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第36回 「為替」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。先日、御嶽山が突然噴火し、登山中の方など多くの人命が失われる大惨事が発生しました。お亡くなりになった方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被害に会われた方々には衷心よりお見舞い申し上げます。今年はやけに自然災害が頻発しているように感じます。個々人が予防できることは限定的なのかもしれませんが、様々な事象への備えを充実しておくことの重要性には議論の余地がありません。わずかでも生存の可能性を高めておけるように、日々、気をつけておきたいものです。

さて、今回取り上げるテーマは「為替」です。このネタはちょっと直球過ぎてこれまで取り上げるのを幾分躊躇していたものです。ですが、さすがにここまで動いてくると無視することはできないと判断いたしました。まずは、最近の為替の動きをおさらいしておきましょう。それまで「六重苦」の筆頭に上げられていた超円高に修正が入ったのが2012年末でした。アベノミクス政策や異次元緩和がきっかけで、ドル円はその後およそ1年で77円から100円強にまで急落。これを追い風に、日経平均株価はこの間に約9,000円から15,000円程度まで急騰しています。短絡的に結びつけることは危険ですが、このときの株価回復には為替(円安)が密接にリンクしていたということが言えるでしょう。しかし、2014年入りと前後して、為替も概ね101~103円の狭いレンジで安定し、株価も同様に調整を余儀なくされます。そして、8月末より為替は再び一気に円安傾向を強めます。直近のドル円では6年ぶりの110円にヒットした後、急騰と波乱の展開となってきました。初めは一過性に思われた今夏の変動でしたが、波乱が沈静化してくるにしたがい、どうも本格的な水準修正となる可能性が増してきたように思われます。

では、今回もその前と同様、株価も連動して上昇しているでしょうか。株価はやや遅れてですが年初来高値を更新しており、そういった観点では確かに連動しているように思えます。先週末の為替の動きにも、株価はビビットに反応しています。しかし、概して見ると2013年の相場ほどには株価は反応していないことも事実です。個別では、自動車など円安メリット銘柄が値を飛ばすケースもありますが、全体としてみれば、物足りないというのが実情でしょう。これらを見る限り、2013年に通用した相場の方程式は明らかに通用しなくなってきていると考えざるを得ません。これは、既に市場にも声が出ている通り「(円安も)過ぎたるは、なお及ばざるが如し」ということなのかもしれません。一定水準を越えた円安は輸入品価格の上昇を招き、それが企業のコストアップ、消費者の買い控えを誘発しつつあるという構図です。特に、エネルギー源は輸入に頼らざるを得ないことから、この影響は確実に波及してくると考えられます。円安で輸出産業や国際企業にはメリットが期待できるものの、そのインパクトは他の産業が円安で蒙るマイナス材料で大きく減殺されてしまうのでは、というのが、株式市場と為替への連動が鈍くなっている要因の一つかと推定されるのです。さらに、ドル高が与える新興国通貨への影響も、新興国が世界景気に与える影響を考えれば無視できません。

問題は、こういった事実・推測を以って、為替の変化をどうやって株式投資に繋げていくか、です。一つの方法は、為替の流れに逆らわず、業績の為替感応度が高い個別銘柄に焦点を当てるというもの。これはある意味、常道とも言えるものです。しかし、ご存知の通り、株価は既に大きく水準を変えてしまっており、これからこの水準で参入するべきかどうか、悩まれる方も少なくないでしょう。順張り投資の難しさはまさにここにあります。一方、ここではもう一つ、まったく別のアプローチをご紹介したいと思います。それは事業構造をこれから変化させていく企業を投資対象として考えるというやり方です。これまで日本企業は何度も「歴史的な円高」や「資源価格高騰」などに見舞われてきましたが、その都度、少しずつ事業構造を変え、いつの間にかそれに対応する体制を構築してきました。現在の円安が「円高局面で構築した最適事業構造」には逆風になっているとしても、遠からず、多くの日本企業はアメーバのように新たな環境下での最適構造を構築することでしょう。もちろん、本当に変化に対応できるかどうか、しっかりと見極める必要はありますが、順張りでない分、焦る必要はありません。このアプローチはやや逆張り的であり、結果が出るまではやや気の長い話になりますが、企業の変化を先取りする投資になる期待もあります。是非、そういった視点で、現在むしろ円安メリットを比較的受けていない企業をご覧になってみてください。大きな変化を先取りする株式市場の醍醐味がそこにあるはずです。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧