マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
10月1日にドル/円相場は110円台大台乗せ達成。しかしながらその後、米国株式市場が不安定な値動きとなっていることで、ドル/円相場も108円台にまで下落を見せ、110円台の大台水準を維持できるかどうかまだ確信が持てない相場となっています。9月の雇用統計は予想を上回る好結果となったことでドル買いが再開し、為替市場ではドル高回帰となったように見えますが、米国の株式市場ダウ平均のチャートは9月19日のアリババのIPOの日にトップアウトし上値が切り下がってきており、株価パフォーマンスが9月に次いで2番目に悪いとされる10月相場にはまだまだ警戒が必要かもしれません。1929年の大恐慌時、米株大暴落した「暗黒の木曜日」(ブラックサーズデー)は10月24日。1987年の史上最大規模となった世界的株価大暴落ブラックマンデーは10月19日でした。リーマンショックは2008年9月だったのですが、9月の株価下落が▲13.9%、その翌月10月の下落率は▲23.8%で、10月にさらに株価が急降下していました。マーケットを崩落させる事件が10月に多いことは不思議ですが、こうした極端な事例とは別に、アノマリーとして10月の下落が多いことの背景には米国の投資信託の決算は10月決算の設定が多いとされ、損益を確定させるためのポジション整理が9月頃から出てくるとされていることが一因とされています。また米国のヘッジファンドの決算は10~11月に設定されているところが多く、これもまた10月のポジション整理が増える一因ではないかといわれているため、需給的に「上がっているものは利益確定に押されやすく、下がっていたものは買戻しで上昇しやすい」時期であることには違いないことから、今年の相場はアノマリー通りにならない(Sell in Mayは起こらなかった、夏場の円高もなかった)からといって、この時期の警戒を怠らないことが肝要になってくるかと思っています。米株が大幅調整を強いられる結果となった場合、ドル/円相場もチャート分析からは、8月20日のレンジブレイク上昇を起点にフィボナッチリトレースメントすると、38.2%押しの107.30円近辺、50%押しの106.50円近辺までの調整があっても何ら不思議はないという分析ができますね。
しかしながら、ドル/円相場は今回の米株の調整局面で日経平均も大きく15500円台まで16300円台の高値から800円を超える下落を見せた割には大きな下落に繋がっておらず、108円台が非常に固い相場となっています。これは、今回の円安局面でドルを買いくたても、上昇が速すぎて買い遅れ、ドルを買えなかった向きが、今回の下落局面では、こぞって下で口を開けて待ち構えていたという印象ですが、一部には「巨大なドル買い注文」に支えられたという指摘もあり、下がったところには、公的マネーが出てきているのかもしれません。IMMの投機家ポジションは円売りが膨らんできていることから、スピード調整への警戒を指摘する向きも出始めており、大きな下落につながるリスクはゼロではないのですが、投機筋と呼ばれる短期マネーの存在は巨大な為替市場ではあまり大きな影響を持つものではなく、こうした短期筋が商いの薄い時間帯(シドニー時間や東京早朝)に仕掛けてきて、瞬間的に相場を崩すという暴力的な動きを見せることはあっても、結局は膨大な実需の動きに飲み込まれていくため、現在の貿易の構造においては、仮に107円台、106円台への瞬間的円高局面が訪れたら、そこは積極的に拾われてしまうという相場環境であると考え、売りに乗るよりも安値に指値注文を置き、買うスタンスで「10月のリスクはドル買いチャンス待ちの相場」と捉えておいた方がいいでしょう。日本の貿易赤字の推移を見れば、日本がエネルギー輸入のためにどれほどのドル買いが必要な構造になっているかがわかります。これはすでに日本が円高ではなく、今後は「行き過ぎた円安」に苦しめられることを示しています。また、ドルインデックスはプラザ合意以降続いた円高局面の超長期のレジスタンスラインを突破し、新たなドル高の時代に入ったことを示しています。ドル高の時代は始まったばかりです。これまでの円安ドル高が過度な円高の修正であったかもしれませんが、今後は円安による苦しみが始まるリスクを考え、株などの資産への投資、外貨投資を真剣に考える時代に入ったといえるでしょう。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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