マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
10月、米株を始め世界のマーケットがリスク回避の色を強めています。ドル/円相場は10月1日につけた110.08円の今年最高値から14日106.75円まで3円強もの下落。米国株ダウ平均は9月19日の最高値17,350.64ドルから10月13日の16,310.47ドルまで5.9%の下落です。米株下落の背景には10月でQE3が終了する見込みであることから、過去のQE終了時の下落が意識されているという指摘もあります。QE1終了時は▲14.6%、QE2終了時は▲19.1%もの大幅調整を強いられたことから今回のQE3終了時にもそれなりの調整があるのでは、というのですが、現在は▲まだ5%にも満たない下落です。仮に今回高値17,350.64から10%下落するとみるなら15,615.58ドル、20%下落するとみるなら13,880.52ドルいう安値も計算されますが、さて今後の市場、どのように推移するでしょうか。
もし、これまでのQE終了時と同様に米株が10~20%もの下落を強いられるようなら、利上げどころではなくなります。QE1終了時もQE2終了時も、「次なるQE策導入が支え」となって下げ止まり反騰してきたわけです。現在の株下落がQE終了によるものだとするならば、量的緩和策が継続していなければ米国株は支えがないことになります。これが真相なら利上げどころかQE4に踏み切る(縮小してきた量的質的緩和策を戻す)というような判断もなされる可能性も否定できず、そうなればドル高シナリオは一気に崩れ去りますね。この場合、ドル/円相場も米国金利上昇思惑分のプレミアが剥げ落ちて再び105円方向へと下落する可能性は否定できませんが、現在の米株の下落幅で見れば、単なる利食いによる下落の範囲を超えるようなものではなく、QE終了に伴う大幅調整というシナリオは杞憂に終わるのではないかと思っています。では、今回の下落の背景には一体何があったのでしょうか。
※FOMC議事録
10月8日に発表された9月分の米FOMC議事録は市場の楽観ムードを一変させました。FRBが世界経済に対して強い懸念を示したことが驚きだったのです。ユーロ圏の成長率とインフレ率、中国、日本の経済成長減速、中東、ウクライナにおける予期せぬリスク...。
これらに強い懸念を持っていることが明らかとなったのですが、FRBが世界経済に対してこのような懸念を明らかにするのはとても珍しいのだそうです。実は米国のグローバルマーケット依存度はかつてないほど高まっており、業績が好調な米国企業は世界全体で事業を展開するグローバル型で、世界経済の失速は米国の失速につながるということなのです。加えて、ドル上昇が米国の景気見通しにとってリスク要因だとはっきりと述べており、FRB内においてもドル高に懸念が高まっていることが明らかになりました。これで、これまでのドル高基調だったマーケットが逆流、ドル安となったのです。
※IMF世界経済見通し
IMFは2014年の世界全体GDP増加率を7月見通しから0.1ポイント引き下げ3.3%としました。特に日本の成長率見通しは大きく引き下げられ0.9%に。これも、株下落の一因とされていますが、FOMC議事録の内容と相まって株式市場にもたらしたインパクトが大きくなったということでしょう。
特に米株には歴史的高値にあったことから下落幅が大きく、海外投資家勢は同じく日本株ロングのウェイトやドル/円ロングのウェイトが大きかったことから、その修正が大きかったものと考えられます。下落のきっかけとなった上記材料は10~20%もの下落につながるような「信用リスク」につながるものではありません。QE1、QE2終了時の環境と比べると米国の経済指標は改善を示しており、マーケットに脆弱性は感じられず、今回の下落は議事録やIMFの世界経済見通しをきっかけに、利食いとポジション調整が起こったに過ぎないと考えています。
特にドル/円相場は株式市場の下落と比較しても下げ幅は小さく崩落には至っていません。これは株式市場と比較しても投資家らのドル買いポジションの偏りが大きくなかったこともあるのですが、日本の膨大な貿易赤字から見ても解るように、輸入筋はドルを買わざるを得ない状況に構造が変わってしまったことで、こうした実需によるドル買いが相場を支えているものと考えられます。
ドル/円相場は、もし大きく下落することがあっても今年の高値として上値抵抗であった105円台くらいまでで、あと2円程度。今週もし、株安につられ107円台を割り込む円高となる局面があれば、少額ずつ丁寧に拾いたいと思っています。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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