第37回 「相場のテーマ」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第37回 「相場のテーマ」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。ここもとは2週連続で大規模な台風が日本列島を襲いました。皆様の地域では大きな被害はなかったでしょうか。被害に遭われた方には衷心よりお見舞いを申し上げます。経済への影響を考えても、直近の台風襲来は週末と重複しており、個人消費には悪影響を与えている可能性があります。消費増税の影響を一刻も早く払拭したい局面ですが、なかなかスムーズにはいかないというのが率直なところでしょう。ただし、消費不振の原因を天候要因に帰結させてしまうことには注意が必要です。そもそも消費好調下において、天候の影響が長く尾を引いたケースはほとんど記憶がありません(だからこそ、消費は好調だったと言えるのですが)。いつまでも天候要因が殊更に注目されるという状況となれば、それは消費の腰はそれほど強くないということを端的に表しているのかもしれません。ここは要注意です。

さて、今回は9月上旬に取り上げたテーマを再掲したいと思います。この時とりあげたテーマは、エボラ出血熱の感染拡大を受けての「感染症の世界的流行(パンデミック)」でした。この時点でエボラ出血熱による死者数は1,400人を超えたところでしたが、現在は実に4,400人を超えています。あれから一ヶ月が経ちましたが、事態は沈静化するどころかむしろ拡大・加速している感も否めません。米国やスペインでも国内感染例が発生するなど世界中に感染が飛び火し、アウトブレイク(感染爆発)するリスクも決して絵空事ではなくなってきています。そういった中、各国政府やWHO、医療関係者の(感染リスクと向き合ってさえの)懸命の努力と、そして勇気には、本当に頭の下がる思いです。引き続き、一刻も早い事態の沈静化を願って止みません。

前回のコラムでは、「パンデミック」を未然に防ぐという視点で株式投資を考えてみました。感染症の特効薬開発会社が最高の投資先となるのは当然ですが、そんなことは事前にわかりません。宝くじのような感覚で世界中の製薬会社の株を手当たり次第に買うのも一つの手段でしょうが、あまり効率的とも思えません。そこで前回は、むしろいち早く症例を特定できる検査関連や日頃の衛生対応関連に注目すべきだろうと結論付けをしました。もちろん現在でもその意見に変化はありません。しかし、アウトブレイクのリスクがより現実的となりつつある現状を鑑みると、「パンデミック」が最終的に未然に防げたとしても、その後の世界には相当の影響(爪痕)を残す可能性があるのではないかと考え始めました。強烈ながらも衝撃は比較的短時間で終了する天災とは異なり、感染症への恐怖はじわじわと長期間継続するリスクがあるためです。その結果、我々の世界観や死生観、行動半径、衛生観などは、これまでとはやや異なるものに変化するのではないか、という想像です。もちろん、これが杞憂であって欲しいのは山々です。

具体的には、医療従事希望者の減少、世界的なヒトやモノの移動抑制、細菌(ウイルス)テロへの備えの構築、などを懸念いたします。一度、パンデミックの恐怖を目の当たりにしてしまえば、こういったリアクションが出てくるのもむしろ止むを得ないのではないでしょうか。そして、そのニーズに対しては、ビジネス機会が必ず発生するはずです。医療従事者の安全性をより強化した防護服・機器、遠隔操作を実現する機器やより安価で確実な通信手段、国家予算を投じてのワクチン開発と量産・貯蔵などが考えられるかもしれません。これらは派手な需要拡大とはならないでしょうが、息の長い安定したニーズに支えられる分野となると想像します。投資を考えるうえでは重要なテーマになると考えます。

しかし、パンデミックが一旦発生してしまえば、当然ながら一般経済への影響は甚大となります。パンデミック沈静化後のことを考えようとしても、まずは生き残りが最優先のときに株式投資などをしている余裕はありません。投資テーマなどをのんきに論じている場合ではありません。既に米国市場では感染者の増加に歯止めがかかっていない状況を憂慮する反応を示し始めています。パンデミックが実際に発生しなくとも、その発生が予測された時点で株式市場はこういった影響を織り込み始めるためです。今はとにかく、極限的な状況に至る前に封じ込め・沈静化に一刻も早く成功することを願って止みません。同時に、医療従事者、政府、軍といった関係者の努力と勇気に最大限の敬意を払いたいと思います。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

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