第132回 ユーロは下げ止まったのか?!ストレステスト受けて 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第132回 ユーロは下げ止まったのか?!ストレステスト受けて 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

10月3日の1.25003ドルを底に下げ止まっているユーロ/ドル相場。ECB(欧州中央銀行)が次々に打ち出している緩和策を材料に5か月近い下落トレンドが続いていますが、ユーロはさらなる下落のリスクはあるのでしょうか?それとも、いよいよ底入れでしょうか?

先週末26日にユーロ圏の民間銀行130行に対する資産査定とストレステスト(健全性審査)の結果を発表、2013年末時点でイタリアなど25行が不合格だったことが明らかとなりました。資本不足の総額は約250億ユーロ(約3兆4000億円)で、このうち12行はすでに約150億ユーロの増資を行い資本不足は解消しているものの13行は資本不足のままと報じられています。ユーロ相場はこの結果をうけてどのように反応するのか注目していましたが、ユーロが売り込まれるということはなく、むしろ週明け27日月曜のユーロ相場は、夕刻に10月IFO企業景況感指数が予想104.6のところ103.2と2012年12月以来の低い数字が出たにも関わらず、ユーロが下がることはなく、むしろ上昇基調にあることが印象的です。

ストレステストとは、マーケットでの不測の事態が生じた場合に備えて、ポートフォリオの損失の程度や損失の回避策を予めシミュレーションしておくリスク管理手法。どんな危機的状況となっても銀行が十分な資本を確保できるよう健全性を高めておこうという目的で行われます。2008年9月のリーマン・ショックや2010年以降に本格化した欧州債務危機などで、銀行が資本不足に陥り破たんしたことで、さらに金融不安に拍車をかけたという苦い経験からのテストです。というのも、ECBは11月1日からユーロ圏内の主要銀行を一元的に監督することが決まっているのです。それに先駆けて、欧州の対象となる銀行のストレステストや資産査定(AQR)が行われました。

不合格になった銀行は2週間以内に資本増強計画を提出する必要があり、その後6カ月以内に計画を実行に移す必要があります。これはつまり、不足分の資金を積み増さなければならないということ。

その不足分は、銀行が持っている資産を処分することで補強されるだろう、というのが基本的な考え方です。銀行が株を持っていれば株を売るでしょうし、外国への投資があればそれを引き上げるでしょう。あるいは融資の引き上げ?なんてことも考えられるかもしれません。対象となった不合格行が一体どのような資産を処分し、引き上げるのかが注目です。それはいわゆる換金売りに繋がると思われるからです。もし海外からの引き上げが起こるとすると、これはレパトリエーション(国内回帰)なのでユーロ高要因になるでしょう。

もし欧州国内の資産の処分、融資引き上げが起こるとするならば景気減退の一因とされ、欧州市場は売られるリスクも孕んでいます。つまりユーロも売られるかもしれません。8970億ユーロにも上る金額ですのでそれなりにマーケットに影響は出てくると思いますが、不合格行が現在どのような資産をどの程度持っていて、何を処分する可能性があるのかを把握できなければ、どのような影響となって表れるのかは、予想できないというのが本当のところです。

また、来週11月に入るとECB理事会が開催されます。先週、ECBが社債の購入を検討している、という追加の量的緩和策のニュースが飛び出し、それまで不安定に売り込まれていた世界の株式市場が下げ止まった経緯がありますので次回のECBは大きな注目イベントです。ECBが社債を買い取るという話は、その分の資金(ユーロ)を市場に放出するというバラマキ策ですから、これはユーロ売り要因となりますね。ただし、ノボトニーオーストリア理事が社債の買取りについてはまだ何も議論されていないと発言しており、このニュースの信ぴょう性については疑問も膨らみつつあるようです。

この10月はアメリカの9月分のFOMC議事録が発表された際に、FRB(連邦準備制度理事会)メンバーがドル高への警戒を強めていたことが明らかになり、これを見たマーケット関係者が慌ててドルロングポジションを手仕舞ったことで、急激なドル高の是正が起こりました。ドル/円相場でも110円から105円台までの円高が進行する流れの一端はこの議事録だったと思われますが、ドル高の大きな修正が起こった結果、これまで5か月にもわたるユーロの下落が一時的に止まったというだけのことのような気もします。

しかしながらFRBがドル高に警戒を示し始めたことで、ドル高の勢いは鈍る可能性が出てきたと思いますので、ユーロ安にもなりにくいセンチメントが出来上がってしまった、、、のかもしれません。とすると、ECBは余程の思い切った策を出さないとユーロ安再開とはならないと見ることもできます。ましてや今回のストレステストの結果、大きなレパトリ(銀行の体力増強のための資金還流)が起こる可能性もあり、ユーロは意外に上昇するかもしれない、なんてことも考えられる局面かと思います。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

TwitterAccount 

@hirokoFR

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧