第134回 115.50円台でWトップ?!ドル/円相場ここからの材料と戦略 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第134回 115.50円台でWトップ?!ドル/円相場ここからの材料と戦略 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

10月31日、日銀によるサプライズ追加緩和とGPIF新ポートフォリオで日本株や外国債券、外国株式の運用比率が高められることが発表されたことを受け、108円台から115円台まで急伸、円安ドル高が進行しました。先週末7日発表の10月の雇用統計の結果が良ければ、さらにドル買いが加速するのでは、との期待もありましたが、予想に及ばぬ内容となったことからドル/円相場は一転ドル売りに。予想に及ばなかったという程度で決して悪い内容ではなかったことから、来年の利上げ観測が後退したということではありませんが、ドル/円相場はさすがに日銀バズーカから1週間で7円もの円安ドル高が進行していたことから、材料出尽くしとなったようです。短期的には過熱感も感じられるここからのドル/円相場、どのように推移するでしょうか。

ドル/円相場が115.50円台で2度高値を付けて下落してきていることでWトップである可能性や、日足のMACDのヒストグラムが低下に転じていることから、頭打ちとなる可能性に言及するチャーチストも。ここからのドル/円相場は110~115円のレンジ相場に入るとする見通しが増えてきました。

しかし、なぜ日銀がこのタイミングでサプライズ緩和を発表したのかを考えると、ここからのドル/円ショート戦略はリスクが高いと考えています。12月、日本の7-9月期GDP改定値を見て安倍首相は消費税増税の判断をするとされていますが、黒田日銀総裁は今回増税判断を見送れば後がない、としてサプライズ緩和を以て安倍首相の背中を押したとみる向きは、バズーカ2が発表されたことで消費税増税が確定的となったと強気です。このシナリオ通りとなるならば、株価は調整があればすかさず日銀がサポート、大きく崩れることはありません。ドル/円も大きく崩れることはないということになります。

7-9月期GDP速報値は11月17日に発表されます。12月8日に改定値発表というスケジュールの中で消費税引き上げ議論が盛んとなってくれば、ドル/円相場が下落する局面もあるかと思います。また11月16日には沖縄県知事選投開票もあり、ここで波乱があればアベノミクスの行方に暗雲という思惑で売り込まれるリスクもあります。しかし、消費税増税に向けて日銀が背中を押したという見方が正しいならば、大きな下落に繋がりそうな局面では、株式市場では日銀がETF買いでサポートし、GPIFマネーも出てくるということです。

そもそも、日銀の追加緩和発表から1週間、先週6日木曜にはECBが追加緩和の姿勢を明確に打ち出しています。ドラギECB総裁は、バランスシートのレベルは、2012年初期のレベルに向けて増加していく、ということを表明。この時のバランスシートの規模は3兆ユーロですから、現在から1兆ユーロ(約142兆円)がさらに緩和マネーとして、放出される見込みです。日銀の追加緩和では、マネタリーベースを80兆円程度増加させることを決定しており、ECBと合わせれば220兆円の巨額なマネーが中央銀行から金融機関に流れ込むことになるのです。欧州、日本の資金需要が大きくない中でこれらの資金は株などのリスク資産に流入し続けることとなるでしょう。

10月15日につけた直近安値105.20円から高値11月7日115.58円の23.6%押しが113.15円辺り。実はこの水準、バズーカ2が発表された10月31日109.17円から11月7日115.58円の38.2%押しもなんと113.15円辺りです。このケースでは50%押しの水準が112.35円で量的緩和策が発表された10月31日の大陽線の終値とほぼ一致します。

ということで、チャート的には押し目があるとするならせいぜい直近の上昇トレンドの全てをフィボナッチリトレースメントしてはじき出した38.2%押し水準と、バズーカ2が出てからの急上昇をフィボナッチリトレース面としはじき出した23.6%がほぼ合致する113.15円程度がターゲット。その下は112.35円、このレベルがバズーカ2の日の終値ですから、この後の上昇分のプレミアが剥落する形で、この辺りまで下落するという見方も出来るかと思います。

どちらにしても、いつ株価押し上げの材料が飛び出すかわからない環境下で、売りから入るトレードはリスクが大きいと考え、押し目を十分に引きつけてから、買う方向での戦略でトレードすることを考えています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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