第91回 伸び続ける海外不動産への投資【北京駐在員事務所から】

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第91回 伸び続ける海外不動産への投資【北京駐在員事務所から】

米国の不動産サービス会社Cushman & Wakefieldが、このほど中国人による海外不動産投資の状況に関するレポートを発表しました。
2008年から本年6月までの間に、投資額は200倍に伸び、この間の合計の投資額は3,370億米ドル(約39兆円)に達するそうです。
以前は、国営企業あるいは民間企業によるオフィスビルへの投資が多くを占めていましたが、近年は個人の参入が増えており、投資目的に加え、自身や家族(海外留学の子女など)が利用することを想定した住宅物件の購入が盛んになっています。

最大の投資先は米国で、次いで英国、香港、シンガポール、オーストラリアやマレーシアが人気となっています。
米国、英国やオーストラリアは、先進国で不動産の市場も成熟している点が、また香港や東南アジア諸国は、地理的な近接性や中華系住民のコミュニティの存在が、それぞれ高い人気の要因とされています。

米国の投資先は、東海岸、西海岸及び五大湖周辺の大都市に集中しています。北京に本社を置く不動産デベロッパーXinyuan Real Estateは、このほど米国で初めての物件として、ニューヨークに建設した総投資額2.5億ドル(約285億円)の分譲マンションの販売を開始しました。
購入者の3分の2が米国人で、3分の1は中国人となりました。

Cushman & Wakefieldの中国部門担当者は、中国人に最も人気の投資先としてニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ロンドン及びシドニーの5都市を挙げ、これらに続く投資先として、シアトル、ダラス、メルボルンを有望視しています。

中国では、不動産の取得及び所有に様々な制限があり、また直近では価格も下落傾向にあるため、先行きがより明るいと見る海外の不動産物件に資金が向かっていると見られています。
新聞記事では触れられていませんでしたが、東京も2020年のオリンピック、パラリンピック開催に向け、開発案件も目白押しで投資先としては有望と見られます。
一方で、既に香港などで問題となっているように、中国からの資金が流入することで価格が上昇し、一般市民の住宅取得あるいは賃借に影響が生じる事態は避けなければなりません。
今のところ、多くの国は中国からの投資を歓迎するスタンスのようですが、事業投資や移民の受入と同様、増加する不動産投資にどのように対応するかは、微妙なさじ加減を求められる問題と言えます。

海外不動産物件への投資と言えば、思い出されますのがバブル経済期の日本です。
ほんの一時期でしたが、中国や東南アジア諸国の分譲マンションの広告が新聞に躍っていました。
当時は、「一体誰がこのような物件を買うのだろう?」程度に考えていたのですが、金融商品や国内不動産、さらには絵画、宝飾品やゴルフ会員権などにとどまらず、有望な投資先を求めて多額の資金が動いていた時代です。現在の中国が、まさに当時の日本に重なって見えます。

中国の富裕層は、その数、資産規模ともに非常に大きく、昔の日本と比べて、世界での影響力は遥かに大きいと言えます。
中国経済の先行きとともに、資金が今後どのように動き、各国の不動産市場にどのような影響を与えるのか、注目されるところです。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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