第38回 「衆議院解散」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第38回 「衆議院解散」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。10月末から我が国の政治・経済は風雲急を告げる展開となってきました。まずは黒田総裁による「日銀バズーカ」の第二弾。これは筆者も含め、ほぼすべての市場関係者の度肝を抜いたアクションとなりました。これにより市場のセンチメントが一気に変わりました。そして、今週から俄かに沸き起こった衆議院の解散「風」。これに絡めて消費税再引上げの有無についても様々な観測が流れ始めています。筆者はこのコラムで4月の消費税引上げの影響は思ったよりも厳しいといったトーンで何度も書いてきましたが、政治的にもそういった感触は浸透しつつあるのかもしれません。解散などは原稿執筆時点ではまだ「風」であり、現実にどう転ぶかは全く不透明ではあるのですが、いずれにしても株式市場には非常に大きな影響を与えることになることは想像に難くありません。これから年末にかけては、まだもう一波乱ありそうな印象が拭えません。

さて、今回はそのホットな話題である「衆議院解散」を取り上げてみましょう。唐突ですが、読者諸兄は「うわさで買って、事実で売る」といった相場格言をご存じの方も多いと思います。実は衆院解散(と、それに伴う総選挙)は、この相場格言がピッタリと当て嵌まる典型的なケースの一つなのです。もちろん、長い歴史の中では例外もあるのですが、概してこの相場格言から大きく逸脱することはない印象にあります。実際、現状を顧みても、解散はまだ何も決まっていないにもかかわらず、解散「風」が増すにしたがい、既に株式市場はその可能性を織り込み始めているといってよい状況にあります。市場は早くもこの「うわさで買う」段階に入っていると考えられるのです。では、この対となる「売るべき事実」は何になるでしょうか? 衆院議長による解散宣言でしょうか。確かに、うわさ-事実という事象からすれば、こう見えるかもしれませんが、おそらくこれは違います。自然体で考えれば、これは総選挙となるはずです。まずは解散にて政治の大きな変化が期待され(うわさ~期待で買う段階)、総選挙の結果によって「実際にどこまでできるのか具合」がかなりの確度で推察できるようになったところで、それまでの期待の修正が入る(事実で売る段階)、という流れです。当然ですが、解散から総選挙にかけて、大きな政治の変化が期待されればされるほど(つまり、株価は上げ局面)、現実の議席数分布がその期待を実現できる水準に達していなければ失望される、ということです。今回も過去の経験則にしたがうとすれば、選挙までは強気相場が、選挙後は調整局面が、それぞれ発生しやすいというシナリオが想像できます。ちなみに2012年の解散・総選挙では、解散が党首討論でいきなり決まったために、「うわさ」の期間はほとんどなくいきなり期待中心の上げ相場が始まりました。そして、自民が予想以上の圧勝となったことで失望よりもポジティブサプライズが発生したため、(定石通りとはならず)株価は一段高となっています。

なお、筆者の記憶が正しければ、「解散」といううわさは過去ほとんどの場合、「買い」材料でした。そもそも「解散」(とその後に控える総選挙)は政治の先行きを大きく変化させる可能性のあるものであり、先行の不透明感という意味で一つの大きなリスクでもあるはずです。現実に解散によって(その後の)政治がさらに混迷したというケースもありました。にもかかわらず、まず「売り材料」とはなっていないのです。これは非常に興味ある傾向です。株式市場は、解散が政治を前進させ、それが経済にも好影響を与えるという「シナリオ」を(ほとんど)無条件に期待する習性があるのかもしれません。しかし、これもよく考えると、不思議ではありません。解散・総選挙によって、直近の民意がしっかり反映された体制を実現することになるためです。民意の支持があれば、それだけ大胆な政治も可能となり、将来の期待も膨らむことになるはずです。逆に、解散が売り材料にまるというのは、それだけその次の政権に期待がなされていない、ということになります。それほど期待の低い政党が選挙で勝てるとはちょっと予想できません。市場の効率性はこういったところでも垣間見ることができると言えるでしょう。

さて、一部の報道を見る限りでは、早ければ今週にも解散があるといった観測もあるようです。実際のところはどうなるか全くわかりませんが、仮に解散があった場合、こういった相場格言を頭に入れつつ、相場展開を眺めてみるのもおもしろいかもしれません。。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

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