第92回 上海人は香港人よりも英語が堪能?【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第92回 上海人は香港人よりも英語が堪能?【北京駐在員事務所から】

世界的な語学教育機関であるEF Education Firstが、このほど世界の国別英語能力指数(EPI、English Proficiency Index)を発表しました。
同社は2011年より指数を公表しており、今回が4回目となります。
世界63の国と地域を対象とし、18歳以上の成人75万人に、文法、語彙、読解と聴き取りのテストを行い結果を指数化しています。

当然ながら、英国、米国など英語を母国語とする国は対象外です。
デンマークを筆頭に、上位にはヨーロッパ諸国が並びました。
アジアでは、英語を公用語とするマレーシアとシンガポールが圧倒的で、順位は12位と13位でした。この両国は、英語能力が「高い」との評価を得ています。
以下、韓国、インド、日本が24位から26位となり、台湾、香港、中国はそれぞれ30位、31位、37位となりました。韓国から香港までは「標準的」との、また中国は「低い」との評価をそれぞれ得ています。

今回、国別の評価に加え、成長著しいBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国及び南アフリカ、但し南アフリカは調査対象外)については、地域別(都市別)の評価も行われました。この結果がなかなか興味深いものであったとして、新聞記事に紹介されています。
調査では、香港の指数が52.5とされたのですが、上海、北京、天津の指数がそれぞれ53.7、52.8、52.7と香港を上回りました。
香港は1997年の返還まで英国の植民地で、現在も英語が公用語とされており英語教育が盛んですので、この結果は意外なものとして受け止められています。
EF社の担当者は、香港市民の英語力がここ数年徐々に低下している一方、上海や北京には外資系企業が続々進出しており、英語能力を求められる仕事も増えているため、市民の英語力が徐々に向上していると指摘しています。
中国では大学入試(高考)で英語が重要科目となっており、また英語能力を高めることが海外留学や良い就職につながるとの期待から、英語学習に力を入れる人が増えています。

調査結果に疑問を呈する声もあり、上海の有名大学である復旦大学の教授は、上海市民の英語力が香港を上回っているかについては懐疑的なものの、上海では近年、小学校から大学まで全てのレベルで英語教育に力を入れており、市民の英語能力が急速に向上しているとコメントしています。
また、香港と上海に滞在経験を持つ大学院生は、自身の経験から、日常会話については香港の学生の方が遥かに上手であると指摘し、あわせて、小売、飲食などサービス業に従事する人々について、香港では皆英語を話す一方、上海で英語を話す人はまれと述べています。
おそらく、香港では全体的な水準がある程度高い一方、上海など本土の都市では比較的少数の上級者が指数の引上げに寄与しているのでしょう。

香港では、英語と広東語が公用語とされてきましたが、近年学校教育では普通語(中国本土で広く用いられています)の授業も行われ、相対的に英語のウェイトが低下する傾向にあり、保護者からは不評のようです。
歴史的な経緯もあり、比較は難しいですが、香港では徐々に英語の存在感が低下し、普通語に取って代わられるように思われ、一方本土の都市部では、人々の英語力が今後も向上していくのでしょう。

日本人にとっても、英語の重要性は将来にわたり不変と思われる一方、中国語(普通語)は今後ますます重要になっていくように思われます。
「語学学習は若いうちから」です。これから高校あるいは大学に進学される若い方は、機会があれば是非中国語を学習されるようお勧めしたいと思います。

英語能力指数のニュースから、いろいろなことを考えさせられてしまいました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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