第93回 米国の大学院入学試験の受験生が減少?【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第93回 米国の大学院入学試験の受験生が減少?【北京駐在員事務所から】

米国やカナダの大学院に入学するためには、GRE(Graduate Record Examination)という共通テストを受験し、スコア(獲得した点数)を志望先の大学院に提出する必要があります。
ビジネススクール、ロースクール(法科大学院)、医学、薬学などの各専門大学院には、それぞれ独自のテストがあるのですが、人文、社会科学や理工学など多くの分野については、米国やカナダの志願者も含め、全員がGREを受験します。

このGREについて、中国人の受験者が減少していると報じられています。2013年7月から本年6月までの1年間に、中国国内でGREを受験した者は44,100名で、直前1年間の47,373名から約7%減少しました。
中国では英語圏の各国や欧州諸国、さらには日本への留学ブームが続いていましたので、この流れに変化が、とも噂されています。
それでも、GREを統括するETS(Educational Testing Service)によると、中国の受験者数は米国、インドに次ぎ国別での世界第3位だそうです。中国とは対照的に、インドの受験者数は本年6月までの1年間に前年から60%増加しています。

GRE受験者数の減少の理由について、関係者は従前大学院レベルが中心であった米国への留学が、大学学部レベルから高校レベルにシフトしており、彼らは大学院に進学する場合も留学先で受験するので、世界全体での中国人受験者数は減少していないのではないかと指摘しています。
実際、2013年から14年にかけ、米国に留学した中国人学生は27万人強で、前年から16.5%増となっています。
内訳は42.1%が大学院生、40.3%が大学学部生となっており、前年の大学院生43.9%、学部生39.8%から変化しています。留学生の低年齢化を裏付けるデータとなっています。
北京にある海外留学関係のコンサルティング会社の担当者は、中国人の米国留学への意欲は全く衰えていないと話していました。
一方、別のコンサルティング会社の専門家は、欧州諸国など米国以外にも留学先が広がっており、これがGREの受験者数減少につながっている可能性もあると指摘しています。

中国では、大学進学率が上昇し、差別化のため有名大学を目指す傾向が強まっています。
中学や高校では、日本のようなクラブ活動(課外活動)がなく、多くの生徒が勉強漬けの日々を過ごしています。
熾烈な大学受験競争を回避でき、また将来海外での就職、さらには永住権の取得などにもつながるということで、富裕層の子女を中心に、多くの学生が海外留学を目指しています。
留学支援、コンサルティングの関連ビジネスも盛況です。
さらには、子女の留学中の住居の確保と資産運用を兼ねてということで、ニューヨークなどの大都市や西海岸などに住宅を購入する家庭も増えています。
中国人留学生の動向が、様々な業界あるいは地域経済にも影響を与えている状況です。

日本でも、1980年代から90年代にかけ、留学ブームが起きましたが、当時はまだ円安で費用がかさむこともあり、その中心は企業派遣留学生でした。
その後、景気低迷の長期化で、企業派遣留学が減少に転じ、現在の中国のような私費での留学も増えることなく、海外の大学、大学院での日本人学生のプレゼンスは低下の一途と伝えられています。
卒業後の就職難も、「日本に留まり就職活動をしたい」との意識につながっているものと思われます。
日本と中国では人口を初め、事情、条件が様々異なるとは言え、海外留学での経験と得られる人脈は、その後の大きな財産になるものと思われます。長期的には各国の国力にも一定の影響をもたらすことが考えられ、非常に気になるところです。

海外留学生の動向からも、中国の台頭を実感させられることとなりました。
=====================================

コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧