第39回 「リノベーション」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第39回 「リノベーション」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。先週には長野県北部で大きな地震がありました。これから冬に向かう前というところで、被害に遭われた方には衷心からお見舞い申し上げます。一刻も早い復旧をお祈り申し上げます。

さて、ついに衆議院が解散となり、事実上の選挙モードに移行しました。10月末の日銀バズーカから始まった上昇相場ですが、定石通りならまだしばらくは継続する可能性があります。今後は様々な政策が明らかになってくるに連れ、果たして「定石通りでよいのか」という見極めも同時になされることになると考えます。特に、7-9月期のGDPは大方の予想に反してマイナス成長となるなど、実態経済はかなり脆弱な状態にあります。本コラムでもやや弱気なスタンスにはあったのですが、まさかマイナス成長になっているとは思いもよりませんでした。既に景気鈍化は織り込み済みと言ってよいでしょうが、これがきちんと回復してくるのかどうか。定石をそのまま適用すべきなのか、実体経済の状況はきちんと改善に向かっているのか、は非常に重要な判断ポイントになるはずです。年末に向けて、まだまだ休めそうにありません(笑)。

さて、今回は「リノベーション」を取り上げます。リノベーションとは、既存の建物(住居など)の改修のことを言い、単なる修復(リフォーム)とは異なって何らか付加価値を高める工事を指します。内装や機能、間取りなどを変更することで、用途の変更や個性的な暮らし方を可能とするものです。これは、中古物件が対象となるために、新築よりも安価で実現できるほか、物件そのものの資産価値を引き上げるというメリットもあります。実は日本全国には空き家が800万戸超も存在しているのですが、それらを有効活用するための一手段としても注目されています。現在、新築住宅は消費税引き上げの反動もあり、前年割れの状態が続いていますが、対照的にリノベーション需要は比較的堅調という見方があるようです。現在日本に多く蓄積された資産(ストック)に注目し、それに付加価値を与えて再利用するというリノベーションは、ある意味非常に社会性の高いアプローチであるとも言えるかもしれません。

では、このリノベーションをどうやって株式投資に繋げるか、です。正攻法であれば、リノベーション業者やそれらを手掛ける建設、不動産会社がリストアップされることでしょう。ただし、これでは直球すぎてあまり面白くありません。このコラムではもう少し捻ってみたいと思います。まず考えつくのは、住設機器や部材でしょう。リノベーションでは躯体の新築はなくとも、新しく入れ替えるケースの多い住設機器、改修用の部材では需要拡大が期待できるためです。また、おそらくはより個性的なデザインや用途が求められると考えれば、そういった提案力を持つ企画型企業にも波及効果は小さくないと想像します。

しかし、より筆者が注目したいのは、地方再生です。2040年には多くの地方が消滅するとの予測もある中、政府は地方創生と銘打って巻き返しを図ろうとしています。地方も空き家の活用などを通して人口増を図ろうとする動きが顕著になってきました。とはいえ、それだけでは「地域興し」にはどうもカードが足りません。端的には産業を育ててお金をきちんと回す仕組みの構築ということになりますが、いきなりそれを実現できる自治体は、企業も含めて、まずないというのが現実でしょう。そういった中、筆者は地方におけるリノベーションが安価な投資で創造性の高い人材や企業を誘致する受け皿になり得るのではないか、と期待しているのです。空き家の活用といっても、あまり感性に訴えない古びた建築物ばかりでは人材募集にも限界があります。シリコンバレーや渋谷のように、テクノロジーやベンチャーの集積場というようなカラーを地方が纏うことができれば、そこには人も知恵も資本も集まり、しっかりお金が回る仕組みが構築できるかもしれません。もちろん、その対象は農業でも観光でも芸能でもかまいませんが、そういった人材をまず確保する受け皿づくりのリノベーションは実は安い投資なのではないか、と考えます。換言すれば、そういった提案力のあるリノベーション業者は、大きなポテンシャルがあるということにもなります。実は既にエッジの効いたリノベーションを企画する(ベンチャー)企業はかなりの数に上っているのです。時代の追い風は吹いているように思います。この中から大化けする企業が出てくるかもしれません。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

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