第94回 国家公務員採用試験の受験者数が減少【北京駐在員事務所から】

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第94回 国家公務員採用試験の受験者数が減少【北京駐在員事務所から】

11月30日(日)に、2015年度の国家公務員採用試験が中国全土で一斉に行われました。
中国では、公務員は高い報酬、手厚い福利厚生と社会的な名誉を得られる職ということで、大変人気があり、多くの大学卒業生が志望します。
官僚の汚職事件が頻繁に報道されるように、公務員には「表に出ない利得」が多々あることが公然の秘密となっており、これも人気の理由の一つと言われています。

ところが、習近平政権が進めている汚職撲滅運動の影響か、今年の試験では出願者数、受験者数がともに昨年から減少しており、注目されています。
来年度の採用枠22,000名に対し、出願者数(書類選考を通過した者)は141万人、受験者数は105万人でした。
昨年の試験では、19,000名の採用枠に対し、152万人が出願し、112万人が受験しましたので、多少門戸が広がった形です。
それでも、平均で50倍近い倍率ですので、熾烈な競争であることに変わりはありません。

汚職撲滅の方針が顕著となり、「うま味」が減少したことに加え、インターネットの普及により、公務員の給与、処遇に関する情報が広く知れ渡るようになったことも、公務員人気低下の理由になっていると言われています。
北京などの大都市では、業種、職種にもよるものの、かなりの高給を得られる民間企業のポジションも増えており、相対的に公務員の給与水準が見劣りする傾向にあると指摘されています。

北京の公務員受験予備校の担当者は、政府の汚職撲滅運動の影響に加え、近年各大学が学生の就職支援、ガイダンス等を充実させた結果、学生のキャリアプランが明確なものとなっており、「とりあえず公務員試験は受験しよう」と考える学生が減少していると述べています。
また、北京の大学で報道関係を専攻している24歳の女子学生は、「大学で学んだ内容を生かせる職に就きたいと考えているが、公務員の採用職種には適当なものがなく、受験しないことにした」と話しています。
「とにかく公務員」ではなく、明確な動機を持った出願者がポジションを競い、結果優秀な学生が職に就くことは、本人にとっても、また社会全体のためにも望ましいと言えます。

先日、こちらで中国の国営企業との合弁会社を運営している日本人幹部の方に話を伺う機会があったのですが、中国側の親会社から派遣される総経理(社長)が交代した途端に、「機械設備等を購入する相手先(取引先)を変更する」との話になったそうです。
最終的に、日本側の親会社が説得し、変更しないこととなったのですが、大変な交渉になったと話していました。
恐らく、新たな総経理が個人的に持っている人脈等を活用し、自身もリベート等の利得を得ようともくろんだものと思われます。
日本でしたら、会社法上の「特別背任」に当たる可能性が高いですが、中国では普通のことなのでしょう。共産党、政府と国有企業の幹部ポストは相互に人事交流があり、異動が行われますので、公務員も同様の形で、自身に近い取引業者に便宜を図り、個人的な利益を得る構図が定着しているものと考えられます。

日本でも、以前は「景気が悪くなると公務員が人気に」などと言われましたが、近年は民間企業への就職との住み分けが進んでいるように思われます。
中国でも、「水面下での利得」に惹かれるのではなく、明確な動機と意欲を持った志願者が職を得て、長きにわたり活躍するよう、願いたいものです。

国家公務員採用試験のニュースからも、現在の中国の様々な姿が見られることとなりました。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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