第138回 加速する円安、どこを見ても円を買う理由が見当たらない 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第138回 加速する円安、どこを見ても円を買う理由が見当たらない 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

米国側からさらに「ドル買い」の燃料が投下されました。ドル/円相場は120円台の大台に乗せてもなお、調整する気配がありません。テクニカル分析においては過熱感が示唆されても揺るぐことなく、そのスピードはさらに加速しています。「もう円を買う理由が見当たらない」ことが止まらぬ円安の背景です。

円安の材料(1)「日銀量的緩和と年金の外債、外貨購入」
アベノミクス第2幕 日銀緩和+GPIFのインパクト(11月4日コラム)
http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2014/11/04.html
10月31日の日銀によるバズーカ2と称される追加の量的緩和策、同日発表されたGPIFの新運用計画がここから円安が加速したのは言うまでもありませんが、この時に書いた120円はすでに到達。そのスピードには驚きを隠せません。円安の材料が日銀や年金マネーのインパクトだけにとどまらぬことを物語っているのでしょう。

円安の材料(2)「原油安による日銀の追加緩和思惑」
原油安が為替市場にもたらす影響(12月2日コラム)
http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2014/12/02.html
加えて円安を加速させたと思われるのが止まらぬ原油価格の下落です。原油価格が下がることでインフレ目標達成が困難となれば、日銀がさらに緩和策に踏み切らざるを得ないのではないか、という思惑が広がることによる円安加速の可能性が指摘されています。

円安の材料(3)「米金利上昇の思惑からのドル高観測」
加えて出てきたのが、いよいよ米国の利上げの思惑です。2014年は当初からドル高を予想が大勢で、その理由が日本と米国の金融政策の違いによる「日米金利差の拡大」でした。しかし大方の予想通りにはならず、米国金利はむしろ下落傾向となった2014年。
コナンドラム?!米国低金利の背景に中国の存在(5月13日コラム)
http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2014/05/13.html
上がらぬ米国債利回りの謎はコナンドラムとして、さまざまに謎解き議論がなされましたが、先週発表された11月の米雇用統計の結果を受けて、ようやく米国金利上昇が加速しそうなムードとなってきました。12月2日、FRBのフィッシャー副議長は低金利を「相当な期間」維持するとの文言を当局が削除する時期が近づいており、2006年以来初の利上げの指針として経済指標を重視することになると示唆していますが、11月の雇用統計の結果を受け、12月のFOMCでは文言削除が決定されるだろうとの思惑が急速に拡大していくものと考えられます。これは米国金利の上昇を喚起するもので、いよいよ日米金利差拡大がドル高の材料として投下されることとなるのです。

円安の材料(4)「ECBの量的緩和観測」
12月のECB理事会では量的緩和策の発表はありませんでしたが、ドラギ総裁は来年の1~3月期に、国債購入を含む追加緩和の可能性を強く滲ませました。2月には理事会がないことから、市場では1月か、3月かに注目が集まっています。原油価格の下落もあり、1月に発表になるユーロ圏の消費者物価速報値が更にデフレに近づく可能性もある中、追加緩和を3月まで待っていられないとの見方も多いようです。追加緩和策の発表はユーロ安を招くため、ドル高要因となることで、ドル/円市場でもドルを押し上げると思われます。

円安の材料(5)「そもそもの円安の背景は需給構造転換、貿易赤字国となった日本」
2月、なぜ日経平均の大幅急落にもドル円相場は底堅かったのか(3月4日コラム)http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2014/03/04.html
2014年度上半期(4~9月)の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5兆4271億円の赤字となりました。赤字額は13年度上期の4兆9963億円を上回り、上期として比較可能な1979年度以降で最大です。日本は3.11後、原子力発電が止まってから高コストのエネルギーの輸入依存度が増しており、このコストが赤字に繋がっている一つの要因と考えますが、膨大なドル買い需要が起こることで、円安の構造に変わってきたようです。

しかし、これだけのスピードで円安が進めば「円安牽制発言」が飛び出すこともあるかもしれません。その場合、ドル/円相場が急激に下落するということも考えられます。しかし、それは積極的な「円買い」による下落ではありません。どこから見ても「円を買う理由が見当たらない」環境となってしまったことで、ショック安が起こればすかさず買い手が現れ、みるみるV字回復するような相場となったように感じます。原油安でロシアにデフォルトリスク?など、このところの楽観相場に警鐘を鳴らす向きもありますが、もし、そのような事態となって急落があっても、その安値を買い場と見る向きがあることを、覚えておいてください。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

TwitterAccount 

@hirokoFR

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧