第95回 キャビアの大量生産に成功【北京駐在員事務所から】

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第95回 キャビアの大量生産に成功【北京駐在員事務所から】

キャビア(チョウザメの卵の塩漬け)は、フォアグラ、トリュフとともに「世界三大珍味」として世界中の美食家たちを虜にしてきました。
フランス料理店でメニューを開くと、前菜の中で一品だけ値段が一桁違うのを目にします。
カスピ海あるいは黒海沿岸が主な産地でしたが、水質の悪化や乱獲により生産量が激減し、現在野生のチョウザメの漁獲はほとんどの国で禁止されています。
しかしながら、違法な漁獲と闇市場での取引は続いており、キャビアの流通そのものへの根強い批判もあります。このため、著名なレストランやホテルなどでは、やむなくメニューからキャビアを外すところも増えています。

市場での流通が激減したため価格も高騰し、「黒いダイヤモンド」などとも称されています。
ネット通販のサイトをのぞくと、500グラムの缶が30万円ほどで販売されています。スプーン一杯で数千円から一万円程度でしょうか。

資源減少を受け、先進国を中心に養殖による生産も盛んに行われていますが、なかなか天然ものの品質に届かず、苦戦しているそうです。

中国でも、東北部ロシア国境のアムール川流域などで養殖が試みられていたのですが、このほど、上海市に隣接する中部浙江省の千島湖で、事業開始から12年を経て養殖に成功し、良質のキャビアの出荷が始まったそうです。
チョウザメは寿命の長い魚で、最も大型で良質のキャビアが採れるベルーガ種の場合、誕生から成熟して卵を持つまでに20年を要するとされ、養殖を難しいものにしています。
千島湖の養殖事業では、ベルーガ種に加え、中国固有のカルーガ種を併用して取り組み、ようやく採卵と製品出荷に至りました。
今年、千島湖からは30トンのキャビアが出荷されたのですが、これは全世界の生産量の5分の1に相当し、千島湖は一躍世界最大のキャビア生産地になったそうです。

製品の9割は輸出に向けられますが、中国国内のホテル、レストラン等にも出荷されており、上海のペニンシュラホテルや、先月のAPEC首脳会議での訪中時に安倍首相が訪問した北京ダックの有名店「大董」などで供されています。
生産業者は、3年後には出荷量を2倍の60トンにする計画としており、価格が下がり中国国内でもより多くの人が味わうことが出来ることに期待すると述べています。
中国では、若年層を中心にワインと欧州各国の料理が人気となっていますので、いずれはキャビアも世界の一大消費国になることでしょう。

13億の人口を有する中国ですから、食料の消費量も膨大です。
中華料理の高級食材「フカヒレ」の資源枯渇が懸念され、高級レストランでもこれをメニューから外すところが増えているのですが、養殖が難しいマグロ、あるいはトリュフなども、今後中国での需要が増えることで、価格の高騰や入手難が起きることが懸念されます。
中国では松茸も広く出回っており、今のところ中国人にはあまり人気がないのか、日本料理店や一部の中華料理店で提供されるのみとなっていますが、これももし中国での人気に火がつくようなことがあれば・・・と心配になってしまいます。

世界の食糧問題と言いますと、小麦、大豆やトウモロコシなど穀物(主食)に目が向きがちですが、高級食材の分野でも、中国の存在が高まっていくことを改めて認識させられた話題でした。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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