第40回 「コモディティ」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第40回 「コモディティ」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。衆議院総選挙は事前に観測報道されていた通り、与党の圧勝という形となりました。ただし、今回はどうも「解散は買い」という定石通りの相場展開とはならなかったようです。選挙戦前半こそは定石通りの上昇局面となりましたが、後半は海外市場の下落をきっかけに大きく調整し、結局は言って来いの相場となってしまいました。選挙結果についても早々に情勢が見極められたこともあり、相場は「材料出尽くし」との判断がいち早く浸透したようにも思えます。とはいえ、低投票率という問題はあるものの、まずはこれで争点とされていたアベノミクスが信認された格好となりました。政策的な金融緩和や財政出動は当面継続するだろうというのが市場の見方になると考えます。

そういった中、筆者は海外市場の動向がどうも気になっています。米国株の調整、ギリシャ株の急落など、潜在的な波乱要因がいろいろ散見されてきたように思えるためです。そこで、今回は特に筆者が注目しているモノとして、テーマに「コモディティ」を取り上げたいと思います。ここで云うコモディティとは、商品先物取引などの対象となっている農産物や鉱工業材料といった商品とお考えください。通常は、汎用的で差別化できない商品やサービスというのがその定義となるのでしょうが、証券投資の世界では特に注記されない限り、市況の立つ農産物や鉱工業材料が指すのが一般的です。具体的には、原油・天然ガスといったエネルギー、金・銀・プラチナなどの貴金属、銅・綿花といった産業素材、小麦・大豆・とうもろこしなどの穀物、コーヒー・砂糖といった食品などをイメージしていただけるとわかりやすいでしょう。これらは日々相場によって価格が決まっており、その値段が瞬時に世界各地の市況に反映される構造にあります。今回、筆者がこれに注目しているのは、実は直近でこのコモディティ価格に大きな変化が生じているからなのです。

簡単にその変化をおさらいしておきましょう。コモディティの代表的指数であるCRB指数で見てみると、2014年は6月に高値312.8を付けた後、じりじりと低下。直近は245近辺まで約20%下落しています。この一ヶ月だけでも8%もの下落となりました。これは金や原油など商品価格が総じて下落していることがその主因です。ここもとは原油価格が急落している、といった報道をご覧になった方も多いのではないでしょうか。これが株式相場の押し上げ要因となったとの解説も少なくありません。つい6年前には資源バブルがあったことと比較すれば(この時のCRB指数ピークは2008年の473!)、まさに隔世の観が否めません。しかも、新興国の景気成長ピッチの鈍化、シェールガスへのOPECの対抗など、コモディティ価格の引下げ要因はまだ払拭できていないのが実状です。日本でも、本来は円安によって例えばガソリンなどの価格が急上昇していてもおかしくないのですが、そうなっていないのはドルベースで相当に価格が下落しているためなのです。

この価格下落が実態経済に与える影響は大きなものが予想されます。当然、コモディティを原材料に用いる産業では原料安メリットが生まれ始めます。その流れが最終価格にも波及すれば、消費者には購買余力も生じ、これがさらなる需要の拡大に繋がるという好循環を生むことになります。これまで商品市況下落が相場の追い風となっているのはまさにこのためです。「2%の物価上昇」を目指す日銀には逆風となりますが、消費者からすれば価格下落が好材料であることは間違いないでしょう。しかし、価格低下がある一定の閾値を越えてしまうと、途端にコモディティメーカーのコスト競争力格差が浮き彫りとなってきます。それに伴って価格先安観が台頭してくれば、過当競争の突入や世界経済の潜在成長力低下の可能性も否定できません。同時に、これまでコモディティ企業が「高価格を前提に進めてきた能力拡大投資」は、採算性が急低下してしまうことになります。これは延いては不良資産となってしまうようなバランスシートへのリスクへと直結してきます(こういった動きは既に一部で散見されています)。つまるところ、様々なことが一気に逆回転を始めてしまいかねないのです。そうなると、これまでの株式投資の世界でもスタンスを大きく変えて臨む必要が出てくるはずです。日本で総選挙が注目されている間でも、世界では徐々に、しかし確実に事象が変化してきています。メリットの先には往々にしてデメリットの芽が潜んでいることは肝に銘じておかねばなりませんね。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

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