第139回 オイルマネーはどう動く?!住宅市場の変化にも注目 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第139回 オイルマネーはどう動く?!住宅市場の変化にも注目 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

原油価格の下落が止まりません。WTI原油価格は50ドル台、北海ブレント価格も60ドル台へと下落しており、過去5か月で40%も安くなりました。何が主因かは依然はっきりしないままですが、あまりに急激な価格下落は需給だけが原因とは考えられず、ロシア制裁だとかサウジアラビアによる米国シェール潰しといった政治的な理由もあるのではないかとも目されています。そして、あまりに急激な下落がもたらす悪影響も懸念されはじめました。原油安が為替市場にどのような影響をもたらす可能性があるかは12月2日のコラム「第137回 原油安が為替市場にもたらす影響」
http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2014/12/02.html
で「ドル高を助長する可能性」について書きましたが、加えて「オイルマネー」の行方が市場関係者の間で注目度が高まってきています。原油安は中東産油国の財政にも大きな影響を及ぼし始めたとみられるためです。

オイルマネーとして金融市場でもその動向が注視されている、産油に依存する中東産油国の資金。石油輸出による経常黒字で蓄積された資金を指すとされ、これまでの原油高によってもたらされた産油国資本は世界の株式・金融市場などに投資されているとみられます。かつてサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、クウェートなど中東産油国の多くが英国領だったことから、中東は英国と経済的な結びつきが強く、多くの政府やその傘下企業が、ロンドンの金融街に本拠を置く欧米系の資産運用会社にその運用を委託しているといわれていますが、こうした結びつきの強さは不動産市場においても同様だとされ、英国の不動産市場にもかなりのオイルマネー、あるいは中東の富裕層マネーが流入しているのではないか、と目されています。その英国の不動産の住宅指標の変化が今後の為替市場にも影響を及ぼすのではないか、という視点で見るならば、英国の10月の住宅ローン承認件数が前年比で16%もの減少となり、昨年5月以来の低水準となったことなどは非常に気がかりなニュース。英国ローン承認件数は昨年まで上昇の一途を辿っており、住宅バブルの様相を呈していたことから、英国は住宅ローン規制に乗り出しており、今年に入ってからは承認件数が下降していたのですが、当局による規制がハードランディングをもたらす可能性もゼロではありません。この夏にさらに規制を強化していることから、住宅ローン承認件数の低下は規制の影響と見ることもできますが、規制をきっかけにバブルが崩壊する可能性に加えて、オイルマネーの引き上げが起こるかもしれないと懸念されていることから、通貨ポンドの下落リスクが高まっていると考えることもできるのです。また、住宅価格にも変調が。英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)が発表した11月の英価格指標はプラス13に低下し、2013年5月以来の低水準を記録しました。ロンドンの価格指標はマイナス40で前月のマイナス33からさらに下落しており、10年以来の低水準です。

住宅価格の下落は、これまで英国不動産に投資された資金の逃避に繋がりはしないか?英国ポンドへ投資された資金が還流すれば、ポンドはさらに下落するリスクに繋がります。いわゆる「レパトリエーション(資金還流)」によるドル高の可能性は、英国だけにとどまらずオイルマネーが投資していたと考えられる英国、豪州、ニュージーランドなどの住宅市場から顕著となっていくかもしれませんね。実際にはオイルマネーや中東富裕層のマネーがどの市場にどの程度の規模投資されているのか詳細は明らかではないのですが、止まらぬ原油安に懸念の声は日に日に高まっています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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