マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。2014年も残すところ数日となりました。みなさまにとって、2014年はどういった一年だったでしょう。思い出に残るよい一年であったことを願って止みません。同時に、2014年には多くの天災が日本各地を襲いました。不幸にも、これにより多くの被災者が生まれてしまいました。関係者の方々には改めて衷心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
ここで簡単に2014年の株式市場を振り返ってみましょう。まず、年初から秋までは消費増税を嫌気した調整色の濃い展開となりました。ようやく10月に年初来高値更新(それまでは1月の初値が高値でした)となりましたが、それでも勢いはなく、その直後には失速となっています。流れを変えたのは、10月末の日銀追加緩和、通称黒田バズーカでした。その後は、消費税増税の延期、解散総選挙と好材料が目白押しとなり、現在は掉尾の一振への期待も膨らんでいる、という状況です。商品市況安といった懸念材料はありますが、まずは年末相場を堪能しているように感じられます。では、2015年はどういった相場になるでしょうか。こちらに関しては、また次回以降、コラムで触れさせていただきたいと思っております。
さて、今回は年末でネタが少ない(笑)という状況でもあり、機関投資家や発行体企業において昨年より話題となっている2つの行動規範を軸に、相場について言及してみたいと思います。ご紹介する行動規範の1つ目は「日本版スチュワードシップ・コード」です。これは、投資先企業の企業価値拡大を目的に、機関投資家が順守すべきとする規範とされています。これらは欧米で先行した取組・概念ではありますが、金融庁によって日本版が策定されたことで一気に浸透しました。現在はそれを受け入れる旨宣言する機関投資家が急増している状況です。中身としては受託者責任の方針公表や利益相反の管理方針公表、投資先企業の経営モニタリング、議決権行使方針などの明確な方針公表などであり、特に目新しい内容を含むものではありません。しかし、かつては「掛け声倒れ」が多かった中、行動規範の受入を宣言・公表することにより、その徹底義務や説明責任を明確にさせるという仕掛けです。2つ目は、現在金融庁によって策定中とされている「日本版コーポレートガバナンス・コード」です。こちらは企業向けのガバナンス規範であり、やはりその徹底と説明責任を負うことを企業自身に宣言させるというものになります。この2つの行動規範を車の両輪とし、企業価値の向上、企業の持続的成長、投資家・受益者の投資リターン拡大を進めるというのが狙いです。
では、実際にこういった流れの中で、個人投資家はどう動けるでしょうか。これによりROEの引き上げなど企業価値の拡大が図られれば、投資家のメリットは極めて大ということができます。そういった観点では、行動規範を受け入れた企業には買い持ちの長期戦略が有効ということになるでしょう。しかし、同時にそれはあまりにナイーブな受け止め方のようにも思えます。もちろん、行動規範が良い影響を与えることに異論はありませんが、果たして規範の導入で劇的に変わるほど現実は簡単でもないと考えるのです。
そもそも企業価値の増大には、やはりビジネスが順調であることに加え、時には蛮勇を奮って大きなリスクを取ることが不可避です。これらは、いくら優れた行動規範を通して見ても、事前に正解と言える経営判断を提示することはできません。まして事業環境の読みや経営センスなど経営陣を見極めることはまず不可能です。経営環境が無風でリスクを取る必要がない時は合理性に焦点を当てた行動規範も効果的でしょうが、そんな理想的な状況はまずないのが現実です。実際の経営環境は厳しい変化の連続であり、日々未知なる局面との戦いです。そういった中で局面打開の牽引車となるのは強い信念やリーダーシップ、大胆なリスクを怖れない姿勢などですが、これらは合理的に測り難いものでもあるわけです。さらに言えば、いくら合理的でキレイな理論武装をしても、実践が伴わなければ机上の空論でしかありません。行動規範が重要なのは当然ですが、同時にそれだけで企業価値の増大が約束されるものでも決してないのです。行動規範の受入れは企業価値増大の十分条件の一つでしかなく、必要条件ではないのですから。
言い古された表現ですが、「相場や経営は生き物」です。局面局面で理屈通りに株価や経営が動くことは決して多くありません。しかし、これは非常に重要なのですが、後から振り返ってみると理屈に合わないと思われた動きが実はかなり合理的であったというケースも少なくありません。逆に、その時には完全無欠と思われた理屈も、時が経って様々な背景が明らかになってくると、実はそうでもなかったという例もまた多くあります。合理的な行動規範や思考などは決して万全ではなく、それへの過信には危うい部分もまたあるということを肝に銘じておかなければなりません。
コラム執筆:長谷部 翔太郎
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