マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
2014年12月、ドル円相場は121.85円近辺まで円安ドル高が進んだものの、年末に向けて118.85円まで3円ほど円高ドル安となる局面も。ドル円だけでなく、ユーロドルや豪ドルドル相場などでもドル安となったことから、全般ドルが安くなる動きで2014年は終わったのですが、これは一時的なものでした。
1月2日の欧米市場では、ドル円相場は再び120円台まで買い戻されています。また、5日、ユーロドルは1.2500ドルを割り込み、2010年の安値であった重要な節目である1.1876ドルをも下抜けてしまいました。ギリシャがEU離脱との思惑から株式市場も下落基調で「リスクオフ」の様相となったことから、ドル円相場も再び120円の節目を割り込んでいますが、ユーロ円やポンド円、豪ドル円などクロス円通貨は大きな下落となっており、ドル円は底堅い動きと見ることができますね。つまり、2015年初動は「円安」ではなく「ドル高」相場。ユーロだけではなく、ポンドや豪ドルも再下落となるなど「ドル全面高」でのスタートを切りました。年末のドル安は、年末年始のポジション調整(ポジションが手仕舞われることによる下落)に過ぎなかったようです。
2014年を総括すれば、随分じらされたものの当初予想通りの「ドル高の1年」でしたが、2015年もこの流れは継続するでしょうか。今回は日本、米国、欧州、英国の主要通貨国を取り巻く環境と各国の金融政策から今年の通貨の強弱を展望します。
◇日本◇
【1】政策金利:0% 長期化の様相。日銀が国債やREIT、ETF買入れ実施中で円安株高要因継続。
【2】GDP:2014年1.6% → 2015年1.1%。3.5兆円の経済対策実施に期待も景気回復にもたつきが見られる。
【3】CPI:2014年3.0% → 2015年0.8%。インフレ目標達成遅れれば日銀追加緩和観測高まる可能性も。
【4】貿易収支:2014年▲12兆円 → 2015年▲9兆円。原油安で赤字縮小観測・赤字縮小は円安圧力の低下に繋がる。
【5】リスク要因:財政改善なければ国債格下げ懸念。GDP成長率伸び悩み。
◇米国◇
【1】政策金利:現状0~0.25%→6~9月には引き上げ予想がコンセンサスで金利上昇思惑からドル高へ。
【2】GDP:2014年2.3% → 2015年見通し2.8%。緩やかに回復が続く予想。(原油安で拡大期待)
【3】CPI:2014年1.7% → 2015年見通し1.6%。インフレ懸念なし(原油安が影響)
【4】貿易収支:2014年▲7377億ドル → 2015年▲7300億ドル。赤字額依然大きくドル売り要因
【5】リスク要因:3月政府債務上限問題再燃の可能性(ねじれ)
◇欧州◇
【1】政策金利:0.05% + 2014年10月カバードボンド、11月ABS買い入れ実施。国債買い入れがどのタイミングで実施されるかが最大の注目点で、この思惑がユーロ安に繋がっている。
【2】GDP:2014年0.8% → 2015年0.6%。ロシア景気減速の影響で景気鈍化リスク高まる。
【3】CPI:2014年0.5% → 2015年原油安でマイナスとなる可能性も?!
【4】貿易収支:2014年1900億ユーロ → 2015年1800億ユーロ。依然黒字大きく下落リスクは小さい。
【5】リスク要因:ギリシャ大統領選挙~緊縮反対派政権成立となれば波乱のリスク。ギリシャEU離脱の思惑がリスクオフを招くか。ロシア経済減速による影響。ECB国債買入れ、市場の期待に応えられない場合のユーロ買戻し。
◇英国◇
【1】政策金利:0.5%。2014年利上げ観測があったが著しく後退、利上げ観測は遠のいたまま。
【2】GDP:2014年2.9% → 2015年2.4%程度に景気減速予想。
【3】CPI:2014年1.5% → 2015年1.3%。11月のCPIは1.0%まで低下、2002年9月以来約12年ぶりの低い伸びへ。インフレ見通し下方修正で利上げの可能性低下。
【4】貿易収支:2014年▲1100億ポンド → 2015年▲1000億ポンド。
【5】リスク要因:原油安で中東富裕層による住宅購入減少観測、住宅市場の過熱鎮静はトップアウトか否か見極めどころ。5月に総選挙、EU離脱唱える勢力の台頭に注意。
上記のさまざまな環境、条件から2015年の通貨の強弱予想は
ドル> 英国 > 欧州=円 のイメージです。
シンプルなのは最強通貨を買い、最弱通貨を売るスタイル。つまりドル円を買う、ユーロドルを売る、という形で2015年は「米ドルを買う」形を取るのがいいでしょう。ドル円相場は、下がったところを少しずつ買い拾う戦略が功を奏する1年となると思います。反面、ユーロはギリシャのEU離脱懸念が杞憂に終われば買い戻される可能性が高く、またECB理事会にて国債買入れが発表されればいったんは材料出尽くしとなって、下げ止まるかもしれません。1.2000ドルを割り込んだ今から安値を積極的には売りにくいため、ユーロドルの取引は慎重に。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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