マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
注目されていた1月22日ECB理事会では、1兆ユーロを超える規模の量的緩和政策が発表されました。中央銀行が市場から資産を買い入れることで代わりに資金を放出、これが市場に溢れることで景気を刺激するという政策です。資金をばらまくわけですから通貨安になりますね。このところのユーロ安は、ECBの量的緩和策を巡っての思惑が織り込まれてきた結果ですが、発表された後もユーロ安が止まらず、下落が続いているということは「市場の予想を上回る規模」であったことの驚きが更なるユーロ売りを招いていると考えていいでしょう。
ユーロは対ドルで11年ぶりの安値を更新しています。1月25日に実施されたギリシャ総選挙で急進左派連合が大勝し、ギリシャのユーロ離脱懸念がより現実的となったことも、週明け月曜の寄付きでのユーロ売りに拍車をかけ、ユーロの対ドル相場はここ6カ月で20%ほど下落となっています。
注目されたECBの量的緩和策の概要が明らかとなったこと、ギリシャの総選挙でやはり反緊縮派が大勝するという結果が明らかとなったことで、欧州を巡る市場の注目のイベントは無事通過しました。為替市場ではユーロが下落し続けている結果、株式市場では欧州株が堅調、ドイツのDAX指数は最高値を更新しています。市場の期待を裏切らなかったECB理事会を受けて、日米の株式市場も神経質な値動きながら下値は堅くサポートされています。1月は銅価格急落に始まり、スイスフラン暴騰ショックや上海株急落などの不透明要因が金融市場を混乱させ、日米の株式急落、ドル/円の急落の懸念を増幅させる瞬間も多かったのですが、ECBのドラギバズーカ砲がこの混乱を鎮めるものと思っています。何が起ころうと市場には資金は潤沢にあり、またこれからも放出され続けることが明らかとなったからです。
となると、ここからは日々の乱高下に振り回されず、リスク資産は下がる局面では丁寧に買い拾うシンプルなスタンスでいいのではないでしょうか。ドル/円相場は115円を下値に、仮にここを下抜ければ112~113円を想定下値として、少しずつ買う戦略。ドル/円相場に関しては、日銀の量的緩和策による効果が持続し続けていますので崩落することは考えにくく、仮にこの115円~120円近辺でのレンジが長引いたとしても、レンジはドル買い方向にブレイクする2014年のような相場となることを想定してのトレードが、功を奏することになるでしょう。
ユーロ相場については、ユーロ下落相場が継続すると思われます。今から巨額の量的緩和策がスタートするのです。米国は年内の利上げが目されており、一方で欧州は今から量的緩和が始まるわけですから、金融政策は真逆です。ユーロを売ってドルを買う、このシンプルな戦略が今年の柱となっていくでしょう。あとはポジションを取るタイミングを見計らうだけです。
通貨トレード戦略を考える時に柱となるのは、各国の金融政策です。米国の量的緩和策は終了し、利上げ時期を模索する過程に入りました。ドルインデックスが高値を更新し続けているのは、世界中が通貨安競争に入る中、米国だけが引き締め方向スタンスにあるからです。
つまり、米国が通貨高に対する懸念を示さない限りは米ドル高となる相場が継続しつづけます。今年2015年はこの「米ドル高」が柱となり、同時にバズーカ砲を放ったECB、欧州通貨「ユーロ安」が柱となるのです。難しいのが、同じく巨額の量的緩和策を実施している日本の通貨円と、欧州通貨ユーロの組み合わせ。日銀バズーカとECBバズーカの通貨安競争ではどちらに軍配が上がるのか、今のところわかりません。ユーロ/円相場は10月31日の日銀バズーカ2が発表された後に149円台まで急上昇したものの、ECBのバズーカの思惑が出始めてから失速しており、先週は130円台まで下落、わずか一か月半で19円もの下落となりました。日銀とECBの量的緩和政策、どちらも通貨安誘導ですから、同じ方向への金融政策をとっている通貨ペアの取引は、わかりにくく、安易に手を出さない方がいいと思います。
ただし、こうした各国金融機関の金融政策を柱にしたストラテジーは年間を通じてという長期的目線の考え方。短期的には買われすぎ、売られすぎからの相場の戻りも見られるでしょうから、今すぐドル買い、ユーロ売りするということではなく、ユーロ安の反動高があった時に、この柱となるシナリオを忘れずに再度売ることができるかどうかが大切だというお話。ユーロドル相場は、下落が加速し始めた起点となる12月16日の高値1.2568ドルから今回の最安値1.1096ドルのフィボナッチリトレースメントの38.2%戻りの1.1653ドル近辺までの戻り局面に入る可能性は否定できないのではないかと思っています。解りやすいシナリオだからといって今すぐユーロ売りするのではなく、テクニカル分析を用いて戻り高値を上手く捉えて売ることが肝要となります。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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