マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
日本では、昨年10月より、食品、飲料、薬品、化粧品などの消耗品が免税販売の対象となり、外国人旅行者は消費税(8%)を支払うことなく購入することが可能となりました。
円安の追い風と相まって、各地のスーパーマーケット、ドラッグストアやディスカウントストアが特需に沸いているとのニュースをご覧になられた方も多いことと思います。
世界の多くの国で、外国人旅行客を取り込み、彼らの消費を促そうと熾烈な競争が繰り広げられていますが、中国でも、このほど外国人旅行者向けの免税販売制度が全国で導入されることが決まり、近日中に具体的な手続等について発表される見込みです。
空港などには以前から免税店があるのですが、品揃えが限られるため、市内の店舗での購入商品が免税となることへの期待の声も聞かれます。
新しい制度によれば、香港、マカオ及び台湾を含む海外からの旅行客で、中国国内での滞在日数が年間183日以下の者が、指定された百貨店で1店舗当たり1日合計500元(約9,500円)以上の買い物をした場合に、消費税(中国では「増値税」と言います)11%が免税となります。
ちなみに、中国の消費税は、17%を上限に複数の税率があり、非常に複雑な制度となっています。
空港などを除く市内店舗での免税販売制度は、2011年に南部の海南省で試験的に開始され、今回対象品目や取扱店を拡充して全国で実施されることになりましたが、小売あるいは観光業界の専門家は、当面、日本で見られたような大きな変化は生じないとやや懐疑的に見ています。
中国では、輸入品に高い関税が課せられているため、高級ブランド品などの価格は諸外国と比べ割高で、11%の免税があっても、中国で購入するメリットが無い状況です。
中国に5年間住んでいる28歳の米国人女性は、「多くの旅行客は、中国独自の商品、例えば茶器、扇子などを購入している。これらが免税で購入できれば魅力的」と話しています。
茶器などの中には非常に高価なものもありますが、高級品に造詣あるいは関心を持つ外国人旅行客は多くないものと見られ、効果は限定的との予想がされています。
購入商品に加え、免税対象商店と旅行者のニーズの間のミスマッチも懸念材料です。
衣服、アクセサリーなどは一般の商店や市場等で購入する旅行者が多く、免税販売を行う百貨店で購入する客は少ないと見られています。
小売業界の専門家は、免税販売取扱店は、絹製品や酒類等中国独自の高級ブランド商品を多く導入し、旅行者の購買意欲を喚起することが求められると指摘しています。
中国の百貨店は、店舗間の熾烈な競争やネット通販の台頭などにより総じて苦戦を強いられており、今回の免税取扱の拡大は数少ない好材料なのですが、これを生かすことができるか、各社の工夫が求められるところです。
私は中国滞在が年間の半分を超えているため、今回の免税販売拡充の対象にはならないのですが、百貨店の品揃えを見ても、「日本の方が安く、品質も良さそう」という印象です。昨年からの円安で、ほとんどの商品が割高に見えてしまいます。
免税販売が広がるためには、ファッションアイテムなどで、中国独自の商品を数多く打ち出せることが必要と思われます。時間がかかることでしょうが、期待をしたいところです。
来月の春節(旧正月)連休には、再び日本にも中国人観光客が押し寄せることでしょう。中国人のツアーは東京⇒富士・箱根⇒京都・大阪のルート(あるいはその逆)が王道と言われていますが、地方都市、観光地や空港にとっては、中国人観光客を上手く取り込むことができれば地元経済への効果も大きいものと思われ、今はチャンスと言えます。
世界の外国人旅行客獲得競争にどのように立ち向かっていくか、これからも知恵比べとアピール合戦が続きそうです。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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