第103回 日本の「有給休暇の消化を企業に義務化」についての報道【北京駐在員事務所から】

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第103回 日本の「有給休暇の消化を企業に義務化」についての報道【北京駐在員事務所から】

現在開会中の通常国会で、年次有給休暇の消化促進のための関連法制の改正が審議され、来年春より施行される予定と報じられています。
年間5日程度について、従業員と相談の上、企業が取得日を決定し、企業に消化を義務付けるというものです。
当然ながら、企業規模、人員体制や業務の性質により、消化の難易度が異なりますので、どの程度実効性を確保できるのか、また企業に対し設けられる予定の罰則規定が機能するのか、既に様々な意見、議論が示されています。今後の国会審議に注目です。


先日、こちらの英字紙が、国際面で紙面を割いて今回の有給休暇消化促進のための法改正について報じていました。
日本の官公庁や企業での長時間労働については中国でも知られており、過労死を巡る労災訴訟などは時々ニュースになっていますが、新聞での日本関係のニュースは政治、経済あるいは文化関係のものが多く、今回はちょっと珍しい取り上げ方でした。


記事中では、大手商社に勤める36歳の女性が紹介されていました。
毎日早朝から会議があり、また夕方からは接待で、一日の勤務時間が14時間に達することも珍しくないそうです。
昨年、彼女には20日の有給休暇が付与されましたが、利用は8日のみで、うち6日は病気によるものであったそうです。旅行や所用に充てる余裕はありません。
彼女によると「同僚も有給休暇はほとんど利用してない」そうです。
彼女は、「このままでは結婚はおろか恋人を作るのも無理」と嘆いており、「遠慮なく休めるよう全社一斉休日を設けて欲しい」と訴えています。とは言え、彼女の希望を実現するためには顧客側の理解と協力も必要で、容易ではありません。
商社の長時間労働は昔から有名ですが、今でも状況はあまり変わっていないようです。


日本の勤労者の長時間労働は、生産性や健康に悪影響を与え、また出生率の低下(少子化)の要因にもなっているとの批判が絶えません。
それでも、有給休暇の消化率は50%程度と言われており、なかなか上昇しません。
上司や同僚の眼が気になるなど取得しにくい職場環境、病気など不測の事態に備えるため消化をためらう傾向、さらにはそもそも最小限の配置で余裕のない人員体制など、利用を妨げる要因は様々です。


北京では、夕方の通勤ラッシュは午後5時過ぎから7時くらいまでで、7時を過ぎると地下鉄、バスともに乗客はかなり少なくなります。おそらく、平均的な勤務時間(拘束時間)は日本よりも短いものと思われます。
一方、昨年こちらのゲームソフト開発会社を訪問する機会があったのですが、午後7時を過ぎても多くの従業員が作業を続けていました。
当然ながら、企業ごとに、また業務の性格、内容により、残業の有無なども異なるのでしょう。
ただ、中国では残業に対し支払われる時間外給与の割増率が高く、通常の時間外割増は50%以上(日本では25%以上)、休日割増は100%以上(日本では35%以上)となっています。これが残業に対する企業側への一定の抑止力になっていることが考えられます。


有給休暇の取得について、特に心理的なハードルが低くなることで、旅行やレジャーなどのためにより多く利用されるようになり、リフレッシュして仕事に臨むことができるよう、まずは企業側に環境改善等の努力を期待したく思います。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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