マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
強い火力で炒められた野菜や、時間をかけて煮込まれた肉などは、中華料理の醍醐味です。
歯ごたえを残しつつもしっかり火が通り、甘みを感じられる炒め野菜を口にしますと「中華料理は最高」と感じます。
火力が決め手の中華料理ですので、当然ながら調理に要するエネルギーも多量になります。
中国人民大学(北京市)の経済学部が行った調査によると、中国の平均的な家庭の台所で消費されるエネルギーは、英国やドイツの4.5倍に、また美食の国として知られるフランスの2.5倍に達するそうです。
ガスや石炭を使用する調理用コンロは、一日平均2回使用され、一回の平均使用時間は32分間になりました。
炊飯器など電力を用いる調理器具は7割の家庭に、また電子レンジも半分の家庭にあるものの、使用頻度は一日1回程度です。
各家庭で消費されるエネルギーのうち、台所で用いられるものの割合は、中国では23%であったのに対し、EU諸国の平均では6%でした。
消費される総エネルギー量、特に電力の消費量では、中国は欧米先進国よりも少なくなっており、調理に大量のエネルギーを消費していることは極めて特徴的です。
北京に住む43歳の女性は、都会で仕事をしながらの生活では、昔母親がしてくれたように時間をかけてお粥やスープを作ることはできないものの、それでも毎日1時間程度は調理に充てているとし、中国の家庭で台所でのエネルギー消費量が多いとの調査結果には納得できると述べています。
中国人民大学が行った中国国内での調査は、26の省及び市の1,450世帯への聞き取りにより行われました。都市部の家庭が6割、町村部の家庭が4割で、この調査は家庭におけるエネルギー消費に関する中国で初めての調査だそうです。
中国は広いため、地域によってもエネルギーの消費パターンに違いが見受けられます。
寒さの厳しい東北部の都市では、集中暖房システムや二重窓等寒さ対策が施されているため、暖房用のエネルギー消費の割合は低く、むしろ南部の家庭で暖房向けのエネルギー消費量が多くなっているそうです。
ちょっと意外な気もしますが、中国南部は緯度としては沖縄並み、あるいはさらに南となるものの、温暖なのは東の沿海部のみで、少し内陸に入りますと冬場の気温が0℃くらいに下がります。建物の断熱が十分でないため、暖房の効果も上がらず、「冬の室内は南の方が寒い」とも言われます。
発展を続ける中国ですが、農村部などでは電化製品の普及もまだまだで、冷暖房以外の家電製品、給湯、照明などに消費される電力は、中国では米国の1割程度に留まっています。中国は原子力発電所の増設に多額の投資を計画していますが、今後生活水準が向上し、家庭での電力需要が増加すると、供給不足を招きかねないとの懸念の声も聞かれます。
中国の調理方法はエネルギーを大量に消費し、また大気汚染の原因にもなっていると批判されていますが、伝統の継承と省エネ、環境保護の両立が図れるよう、技術革新や市民の意識の向上に期待したく思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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