第149回 株価に変調あれば豪ドル、ユーロに注目 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第149回 株価に変調あれば豪ドル、ユーロに注目 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

米国株も、ドイツ株も日本株も絶好調ですね。 1月は下げ止まらぬ原油安、ギリシャのEU離脱懸念、スイス国立銀行の突然の政策変更によるフラン高ショックなどリスク要因が多く、株式市場では下落を見込んだ売りが膨らんでいたようです。それぞれの要因がさほど大きなリスクでないことが確認される過程でショートポジションは整理され、株式市場はリスクオンの様相に。そもそも、米国が利上げの時期を模索し始めたとはいえ、まだ量的緩和は継続中ですし、日欧も無制限での量的緩和政策を導入しているため、マーケットにはお金がじゃぶじゃぶに溢れています。リスクが強まれば、その資金が金や国債に逃げ、リスクが遠のけば株式市場に向かいます。「過剰流動性マネー」が、どこに向かうかを的確に把握できていれば、あまり難しい相場ではありません。FXトレードにおいても、どのような局面でどの通貨に資金が流れるのかを把握できていれば、大きな流れに乗ることはそう難しいことではないと思います。


◆株価堅調、リスクテイク相場

株価が堅調になってくると、リスクを取る方向に資金は流れます。通貨でいえば、流動性が低くリスク時には、値が飛んで下がるような新興国通貨。得てして新興国通貨は金利が高いですが、これは信用が低く、海外からの資金を集めるために高い金利を付けているということですので、リスクが懸念される相場の時は真っ先に売られます。しかし、金融市場が落ち着きを取り戻し、リスクを取り始めれば高金利は魅力です。今、世界の中央銀行が緩和競争に入ったことから、あふれるマネーは高金利国債に流れ、国債市場では利回りが低下してしまっています。「イールドハント」などという言葉が昨年もてはやされましたが、高利回り商品に資金が流れたために、利回りが低下してしまっており、高利回り商品が貴重な時代へと入ってきました。その意味では、南アフリカランド円やトルコ円などの金利は魅力ですし、2月にサプライズで利下げを発表して急落した豪ドルも下値を切り上げてきているのは、金融市場のリスク懸念が後退し、株式市場が堅調である、つまり、リスクを取る流れに入ってきたことから豪州の金利を目的に資金が集まってきているのです。利下げをしたとはいえ豪ドルにはまだ2.25%もの金利があるのです。同じようにニュージーランドの政策金利は3.5%。日米欧がゼロ金利政策にあるなか、2~3%もの金利は魅力ですよね。市場に落ち着きが戻れば自然と資金が流入する通貨です。


◆株価に変調、リスクオフ相場

現在高値追いとなっている世界の株価ですが、いつまでも調整なしに上がるワケではありません。大きな調整局面が到来した時には、一体どうすればいいでしょう。前述しましたが、リスクが懸念される時は、高利回りの信用の低い通貨は真っ先に売られますので、南アフリカランド円やトルコ円、そして、やはり豪ドルやNZ円も下落が厳しくなります。リスクオフ時には高金利通貨は急落する傾向にあるので、もし、この先株価に大きな調整があれば、高金利通貨の買いポジションをまず整理するのがひとつの方策でしょう。また、「利益が出ている資産の利食い」が大量に出るのもリスクオフ時の特徴。為替市場の変動要因は様々で、買い切り、売り切りの玉と呼ばれる実需の動向が大きなが流れを決めるのですが、リスクオフ時には短期的なポジションの逆流による値動きでボラティリティが急上昇します。IMM通貨先物ポジションなどで、短期筋がどのようなポジションを構築しどのような偏りが生じているのかを把握しておくことが重要となります。現在でいえば、ドル円のロングはあまり積みあがっていません。意外とドル円の下落はないかもしれないと思う反面、ユーロドルのショートポジションが大きく積みあがっており、リスクオフとなれば、このポジションが解消される(ユーロ売りで儲けていたポジションを利食う手仕舞いの動き)で、ユーロドルが急上昇する可能性がある、と思われます。

もし、現在の良好なセンチメントが突然変化したらどうすればいいのか。常にこのようなリスクに備えたシナリオを描いて準備しておくことがトレードで生き残るためにはとても大事なことなのです。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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