第150回 ドル/円相場はレンジブレイクできるのか 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第150回 ドル/円相場はレンジブレイクできるのか 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

2月米雇用統計の結果を受けて米国の6月利上げシナリオが濃厚となってきたようです。寒波による悪影響も懸念されていた2月の雇用統計でしたが、非農業部門雇用者数(NFP)が29.5万人増(予想23.5万人増)と驚愕の好結果。雇用者数の伸びが20万人超を記録したのは2月で12カ月連続となり、1995年3月までの19カ月連続以降で最長となりました。

この数字を受けて今月3月のFOMCでフォワードガイダンスが変更される(「辛抱強く」の文言が削除される)のでは?という見方が一気に高まりました。つまり、利上げへの道が一気に開けたとマーケットが受け止めたのです。この日、ラッカー米リッチモンド連銀総裁は、利上げ時期は6月が有力候補だとの見解を示しています。ドル/円相場は121円台へと上昇し、12月8日につけた高値121.83円に迫っています。一方でこの日、ダウ平均は▲278.94と300ドル近い下落で「ドル高株安」が鮮明となりました。株式市場の下落は利上げを織り込む形で利食いが旺盛となったものと見られます。

さて、ドル/円相場は12月8日の121.83円を超えてレンジブレイク、新たな上昇相場となるでしょうか。


◆失業率の改善の裏に・・・

NFPと同時に発表された失業率は5.5%で前回5.7%より改善、6年ぶりの水準にまで改善してきました。しかし、この失業率の改善は、NFPの増加に加えて、労働参加率が62.8%と62.9%から低下したことも一因とされています。労働参加率はFRBイエレン議長が気にしている項目で、平均賃金の伸びもわずかながら悪化しています。平均時給は前月比0.1%増で予想の0.2%増を下回っています。※前月は0.5%増

マーケットの反応は早期利上げに傾きましたが、イエレン議長が繰り返し指摘している賃金上昇率と労働参加率は悪化していることは気がかり材料です。6月利上げの可能性に疑問が生じれば、これまでのドル高の調整が入ることも考えられます。


◆クロス円は上昇していない

雇用統計の結果を受けて上昇しているのは米ドルだけです。ユーロや、ポンド、豪ドルといった「ストレート通貨(対ドル相場)」は軒並み安で、クロス円(対円通貨)はユーロ安やポンド安、豪ドル安に引っ張られて、逆に下がってしまっています。つまり、クロス円で上昇の反応を見せたのはドル/円相場だけです。ユーロ/円などは1月26日のECBが量的緩和策導入を発表した直後の安値を再び試す展開となってきています。

クロス円下落がドル/円相場の上昇の足を引っ張ってしまい、ドル/円がレンジを上抜けできない可能性は十分に考えられます。クロス円が弱い、つまり、円安主導の相場になっていないのは日本側の事情があると思われます。4月の統一地方選挙に向けて、日本市場は官製相場となっていると指摘されていますが、官製相場というのは、「株価を崩さない」ことが目的であり、高値を買って吊り上げることが目的ではありません。
官製相場による日本株の高値追いはないということですから、ここからの日本株、は海外勢の動向次第では「下がらなくとも膠着してしまう可能性がある」ことになります。海外勢は日本株を買う際、円を買いますが、アベノミクス相場、貿易赤字の拡大局面では、円安が進んでしまうため、為替部分での損失が出てしまいます。そのため、これまでは日本株買いと同時に為替市場で同時に円を売るというヘッジを行ってきましたが、昨今は貿易赤字の縮小などを鑑みて、日本株を買う際に為替市場で円ショートのヘッジをしていないとの指摘があります。

このところ非常に強かった日経平均ですが、もし、米株が3月17-18日のFOMCに向けて利上げを織り込む形で調整するようなら、日経平均だけが高値を更新し続けるということは考えにくく、海外勢の日本株買いも一服すると考える方が自然です。そうなると、日本株上昇に伴ってドル/円もじわりと上がりだすというシナリオはFOMCに向けては描きにくくなってきたとも考えられます。ここからはFOMCに向けての株価動向が為替市場にとっても非常に重要です。株価の大きな調整があれば、ドル高の是正も同時に起こるリスクがあることに注意しておきましょう。ユーロ/ドルの急上昇のリスクにも留意しておきたい局面です。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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